太極図説(読み)タイキョクズセツ

デジタル大辞泉 「太極図説」の意味・読み・例文・類語

たいきょくずせつ〔タイキヨクヅセツ〕【太極図説】

中国、宋代の哲学書。1巻。周敦頤しゅうとんい著。成立年未詳。宇宙生成人倫根源を表すとされる「太極図」と、それに施した249字の解説からなる。のち、朱熹しゅきが「太極図説解」を著したため、朱子学聖典とされた。→太極

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精選版 日本国語大辞典 「太極図説」の意味・読み・例文・類語

たいきょくずせつタイキョクヅセツ【太極図説】

  1. 中国の儒家書。一巻。北宋の周敦頤(とんい)撰。全文二五〇字で万物の生成を図示した太極図の解説。「易経」に陰陽五行説を採り、生成論から倫理説・修養論を説く。朱子に宋学の淵源と尊ばれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太極図説」の意味・わかりやすい解説

太極図説
たいきょくずせつ

書名。中国北宋(ほくそう)の周敦頤(しゅうとんい)(濂渓(れんけい))著。「太極図」という一つの図と、その説明にあたる約250字の「説」とによって、宇宙万物の生成の過程を示し、あわせて人間のあり方を論じたもの。本書によれば、万物の根源は太極であって(太極は無極でもある)、太極は動・静の状態を繰り返し、動くときに陽の気が、静止するときに陰の気が生じ、その陰と陽との変化・結合によって水火木金土の五行を生じ、太極と陰陽・五行が渾然(こんぜん)融合して互いに結び付き、天地の分化に応じて男女(雌雄(しゆう)・牝牡(ひんぼう)を含む)が成立し、かくて万物が生出する。そして万物のなかでも人はもっとも優れた存在で、とくに聖人は中正なる人の道を確立したと説く。宋学の大成者、南宋朱熹(しゅき)(朱子)は、太極を理と解して、これを基にして自己の理気哲学の理論を完成するとともに、本書を注解した『太極図説解』をつくってこれを表彰した。その結果、周敦頤は宋学の開祖と目されるようになった。なお本書は易(えき)の思想に基づくが、唐代以来、仏教道教の方面で理論を図解して示すことがたびたび行われていて、本書はその様式を踏襲しているし、思想のうえでも道家ないし道教的な思考を継ぐ点のあることが指摘され、さらには『太極図説』を周敦頤の作ではないとする議論も後を絶たない。

[末木恭彦]

『今井宇三郎著『宋代易学の研究』(1958・明治図書出版)』『巨勢進他訳注『周濂渓』(『朱子学大系2 朱子の先駆 上』所収・1978・明徳出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太極図説」の意味・わかりやすい解説

太極図説
たいきょくずせつ
Tai-ji-tu-shuo

中国,宋代の思想家周敦頤の著。宇宙間のすべての物 (現象) は無規定で,しかも唯一の「太極」を根源とし,背反,矛盾,調和,累積などの陰陽二気と五行の錯綜によって万物が生成するという世界観とその思弁的理法とを体系化し,図式化した「太極図」につけられている論文。わずか 250字の論文であるが,戦国時代,特に漢代以来追究されていた万物の生成,展開の根本理法,いわゆる陰陽五行説を簡明に体系化している。またその自然理法における人間の優位,道徳実践の主体性を基礎づけているので,著者の人物,その著の『通書』と相まって,程朱学の形而上学的基本構造となり,特に朱子によって大いに推尊された。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「太極図説」の解説

『太極図説』(たいきょくずせつ)

北宋の宋学の祖周敦頤(しゅうとんい)の著書。1巻。無極にして太極と名づける宇宙の本体から,陰陽,五行,万物,人間(道徳),聖人が生ずるとし,人間道徳の実践に至高の価値を与えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「太極図説」の解説

太極図説
たいきょくずせつ

北宋の儒学者周敦頤 (しゆうとんい) の著書
1巻。宇宙論を示した太極図に,250字ほどの説明を加えたものからなり,宋学の基礎をなした。「易経」に,太極は万物の根源で陰陽動静二元のもとをなすとあり,彼はそれを太極図に示した。

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世界大百科事典(旧版)内の太極図説の言及

【周敦頤】より

…官僚としての経歴には目立ったところはないが,朱熹(しゆき)の顕彰により,道学(朱子学)の第一走者として崇敬され,《宋史》道学伝の筆頭に伝記を立てられた。著書に《通書》と《太極図説》がある。前者で説かれる〈人は学ぶことによって聖人になりうる〉という主張は,のちの朱子学と陽明学のバックボーンとなった。…

【宋】より

…強烈な個性の持主であった彼らは,既存のあらゆる権威を否定し,経書そのものに没入してその真の精神を体得し,それを現在に生かそうとする理想に燃えていた。范仲淹,欧陽修らはそれを学問的に体系づけるまでにはいたらなかったが,これをうけた周敦頤(しゆうとんい)は,宇宙の生成過程を図式化して説明を加えた《太極図説》を著して,新儒学の青写真を示した。その学説は張載,程顥(ていこう),程頤(ていい)に受け継がれ,南宋の朱熹(子)にいたって大成された。…

【太極】より

…その出典は《易》繫辞伝(けいじでん)の〈易に太極あり,これ両儀を生じ,両儀 四象を生じ,四象 八卦(はつか)を生ず〉である。北宋の周敦頤(しゆうとんい)はこれにもとづいて《太極図説》を著し,〇で象徴される太極から万物が生み出される過程を図式化した。太極はそこでは原初の混沌たる一気を意味したが,南宋の朱熹(しゆき)はこれを〈〉とは別の範疇(はんちゆう)である〈〉と解釈しなおし,しかも万物に内在する個別的な理(各具太極)を統(す)べる窮極的存在(統体太極)とみなした。…

※「太極図説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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