中国,江蘇省南端にある淡水湖。面積2420km2。日本の琵琶湖の約3.6倍。中国で5番目(淡水湖としては3番目)に大きい。最大水深は4.8mと浅い。湖水の成因については,海湾が長江(揚子江)デルタの伸長によって閉塞されてできたと説明されてきたが,現在の湖底に広く分布する新石器時代以来の遺跡や地質資料によれば,沖積世初期にはむしろ湖水は現在より小さく,沿海での海浜の成長,河岸での自然堤防の形成に加え,湖水地域の地盤が沈降傾向にあり,その結果皿状の地形が形成されて,流出路がしだいにふさがり,排水されなくなった積水で湖水が拡大したものと考えられる。太湖の東にある淀山(てんざん)湖をはじめとする大小の湖沼も,付随して新しく形成されたもの。古代の文献には震沢,具区,笠沢などの名で現れる。その後,唐・宋時代から治水事業がすすめられ,湖水は再び縮小する。こうして周辺の耕地は増大し,宋代以降は江南第一の農業地域,とりわけ主要な米産地となり,その生産力を背景に蘇州をはじめ都市が発展し,中国において経済の中心地域となった。淡水漁業も盛んで,特に銀魚(しらうお)は有名。湖中には洞庭西山をはじめ,大小48の島があり,東から突き出る半島とともに秀麗な風景を呈し,道教の神仙が住む勝境(洞天福地)として著名で,江南有数の景勝地となっている。
→太湖石
執筆者:秋山 元秀
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中国、江蘇(こうそ)・浙江(せっこう)両省にまたがる湖。旧称は震沢(しんたく)、笠沢(りゅうたく)。面積2213平方キロメートル、中国で四番目に大きい淡水湖である。湖面の標高は平均3メートルで低く、水深は平均2メートルで浅い。湖中には西洞庭(せいどうてい)山、馬迹(ばしゃやく)山など数十の島がある。もとは陥没した盆地に海水が浸入した海湾であったが、そこへ揚子江(ようすこう)が運搬してきた泥砂が堆積(たいせき)して浅海となった。さらに揚子江南岸より南東方向へ、また銭塘(せんとう)江北岸からも北東方向へ砂州が延伸し、これら2本の砂州が浅海を囲い込んで潟湖(せきこ)の「古太湖」を形成した。古太湖は、天目山より流れる東・西の苕渓(ちょうけい)や南渓などが堆積する泥砂により縮小し、現在の浅い湖となった。湖の水は瀏河(りゅうが)、呉淞(ごしょう)江、黄浦(こうほ)江を通って揚子江に排水されるが、これらの河川は狭く、勾配(こうばい)が緩やかなため水が流れにくく、湖の水位上昇により、周辺地区にしばしば災害をもたらした。周辺には古太湖の名残(なごり)である無数の湖沼があり、また縦横無尽に水路が走り水郷地帯を形成している。周囲の開発は唐・宋(そう)代から本格化し、明(みん)・清(しん)代には水稲や養蚕に加え、さまざまな農村手工業が発達した。現在は灌漑(かんがい)用水源として、また交通路として重要な役割を果たしている。
[林 和生]
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… 長江三角州は鎮江,揚州から東へ長江の沖積によってできた大平原で,北は新通揚運河から南は杭州湾まで,上海市はその中に含まれる。長江は南京を過ぎて平地に出ると,流れはゆるやかになり大量の砂泥を下流に沈殿させて,太湖を中心とする広大な湿地帯を作りあげた。そこへ西部山地から流入した水が,いわゆる三江(呉淞(ウースン)江・婁(る)江・東江)に分かれて海に注いでいたのであるが,三江の下流が淤塞(おそく)すると太湖の面積は増大し,いたるところに沼沢が発生した。…
…魏晋南北朝時代に入ると,洞庭湖の周辺に洞庭すなわち大洞窟があると信じられるようになり,君山(洞庭湖中にある名山)も洞庭山と呼ばれた。のみならずこの洞窟は,はるか東方の呉の太湖(江蘇省)にあるという洞窟と地底の道によって結ばれているとされ,太湖中の包山も洞庭山と呼ばれるようになった。この名称は今に伝わり,東洞庭山と西洞庭山は太湖遊覧の景勝地として著名である。…
…【村下 重夫】
[中国]
中国で〈湖は都なり〉と説明されることがあるのは,都に人と物資が集まるように,四方の水流が集まり注ぎこむためである。現在の洞庭湖,鄱陽(はよう)湖,太湖などの江南の湖は,古代においても有名であった。雲夢沢(うんぼうたく)とよばれたのは,現在の洞庭湖を含んでより大きく湖南・湖北両省にひろがっていた大湖沼であろうと考えられる(雲夢)。…
※「太湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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