契約講(読み)けいやくこう

改訂新版 世界大百科事典 「契約講」の意味・わかりやすい解説

契約講 (けいやくこう)

主として東北地方に分布する村落内の集団。単に契約とも呼ばれる。契約講は,すでに近世前期の地方史料に現れるが,現代でも機能を維持している地域も少なくない。その場合,睦親講とか実業団など他の名称に変えているものもある。さまざまな形態があるが,一村落を単位に構成される,(1)戸主会的な型と,同じく(2)若者組的な型が基本型とみられる。両者が一地域に重層する形態もある。(1)は,戸主を構成員とし,規約をもち,春秋2回ほど契約の寄合を厳粛に開く。その際,役員司会のもとに共有山林等の管理や年間行事について協議するとともに,神事酒宴を催す。しかし,葬式や屋根替えなどの互助のみをする型や,飲食と親睦のみを目的とする型もある。(2)は,15歳以上40歳前後の長男を中心に構成され,主として祭礼や村仕事に従事する。(2)は明らかに年齢集団であるが,(1)にも年齢階梯制としての一面が認められる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「契約講」の意味・わかりやすい解説

契約講
けいやくこう

契約を結ぶ関係者によって結成された講集団をいう。大きく分けて2種類に分類される。一つはムラの公的生活のうえから締結されている村寄合(よりあい)、契約会などといわれているものである。他は私的生活において契約されるもので、労働力を必要とするユイ仲間、経済的に助けあう頼母子(たのもし)講などである。しかし実際には二つの性格は明確に区別されるものではなく、混在し、複雑な性格をもっている。公的性格をもつものは、村の運営を行い、その秩序を守ってゆく機能がある。私的性格をもつものは、前記のユイ仲間のごとく労働力を相互に交換しあうもの、設備を共同で使用するために契約を結ぶものなど種類も多く、ムラ人の生活全般にわたって活用されることが多い。山形県、宮城県などでは、ケイヤクといえば、葬式のときの相互扶助の仲間だけを意味し、地縁的なクミより広範囲の集団をさしている所もある。このケイヤクは、公的、私的、いずれの性格をも有している。私的性格をもつものには、職業と結合し、かつ信仰的要素をもつ住吉(すみよし)講、恵比須(えびす)講、山の神講など、重層性を有するものもある。さらに性格、年齢別によって契約講を構成するものもあり、契約は社会結合の必要から生まれた集団といえる。

[鎌田久子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「契約講」の意味・わかりやすい解説

契約講
けいやくこう

宮城県をはじめ東北地方に主として分布し,長野県,千葉県の一部にもみられる村落組織の一種。契約講は相互平等に結ばれた地縁的集団で,病気見舞い,家の建築,屋根のふき替え,結婚式,葬式,年忌,法要,田植えなどにおける生活互助の役割をになっている。普通は単にケイヤクと呼ばれることが多く,地方によっては神起講とか睦親講とか呼ばれているところもある。構成員には,村落または村組の全戸がなるが,なかには葬式組として存在していたり,単なるケイヤクという村寄合の名称となっているところもある。こうした組織の多くは,成文化した規約をもっており,その規約を犯せば,制裁として村八分を科されるところもある。会合は,一般に春秋の2回または年1回もたれる。ケイヤクの組織,機能,行事などには地域差が著しく,村落構造とも深くかかわっていると考えられる。

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百科事典マイペディア 「契約講」の意味・わかりやすい解説

契約講【けいやくこう】

東北地方などにみられる村組()。冠婚葬祭や村仕事の合力,村の共有財産の管理などを行い,年1〜2回飲食を共にし村自治の協議を行うが,村政の機関ではなく,戸主が構成する相互扶助組織。また主として祭礼や村仕事に従事する若者組的な講もみられる。一種の年齢集団的性格ももつ。
→関連項目

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