改訂新版 世界大百科事典 「女房言葉」の意味・わかりやすい解説
女房言葉 (にょうぼうことば)
天皇の御所や,院の仙洞(せんとう)御所に仕える女官(女房)の用語,ことに女性語として特徴のある形式をもつ語。室町時代の有職(ゆうそく)に関する書物《海人藻芥(あまのもくず)》《大上﨟御名之事(おおじようろうおんなのこと)》にあげたものでは120語ほどある。もともとは女性の心理から出た隠語で,省略形,擬態・擬音語や比喩による言換えの形式が多く,上品で優美な婉曲な表現として将軍家の大奥の女性にも用いられ,さらに町家に伝わり,男性にも用いられるようになった。以下の(1)~(5)など,数種の形式に分かれる。(1)〈お……〉の形式 おいた(かまぼこ),おかか(かつお節),おなか(腹),おいしい(いし=美味)など。(2)〈……もじ(文字)〉形式のいわゆる文字言葉 かもじ(母,神,髪),くもじ(九献(くこん)=酒,また茎づけ),しゃもじ(杓子(しやくし)),パもじ(バテレン=padre),ひもじ(ひだるい=空腹),ゆもじ(湯具=腰巻)など。(3)〈……もの〉の形式 ほそもの(そうめん),あおもの(青菜)など。(4)重ね言葉の形式 いしいし(だんご),するする(するめ),こうこう(香の物)など。(5)その他形状・色彩についての直喩・形容など かべ(豆腐),むらさき(イワシ),はぎのもち・はぎの花(ぼた餅),きなこ(ダイズの粉)など。
執筆者:山田 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報