(読み)ヒン

デジタル大辞泉 「嬪」の意味・読み・例文・類語

ひん【×嬪】

古代、天皇の寝所に侍する女官皇后夫人の下位。四位・五位の者で、後世の女御にょうご更衣こういにあたる。

ひん【嬪】[漢字項目]

[音]ヒン(漢) [訓]ひめ
婦人の美称。ひめ。「別嬪
天子の側室。「妃嬪

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精選版 日本国語大辞典 「嬪」の意味・読み・例文・類語

よめ‐づかい‥づかひ【嬪】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 天皇の寝所に侍する女性の地位の一つ。妃・夫人に次ぐ地位。また、その人。ひん。よめづかえ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「五日は中務省妃・夫人・嬪(ヨメヅカヒ)女御の夏の衣服の文を申す」(出典太平記(14C後)二四)
  3. ( ━する ) 嫁として舅や姑につかえること。
    1. [初出の実例]「弐人の玉女、重華の母に嬪(ヨメヅカヒ)する事、懃(ねんころ)也」(出典:壒嚢鈔(1445‐46)四)

ひん【嬪】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 天皇に侍する後宮女性の地位の一つ。皇后・妃・夫人に次ぐ地位。また、その人。令の制度では、天皇の正妻を皇后、内親王を妃、それ以外を夫人・嬪とした。夫人は三位以上、嬪は四位・五位のもので、後世の女御・更衣にあたる。〔令義解(718)〕
  3. 死んだ妻をいう語。〔温故知新書(1484)〕 〔礼記‐曲礼下〕

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普及版 字通 「嬪」の読み・字形・画数・意味


17画

[字音] ヒン
[字訓] そう・そばめ

[説文解字]
[甲骨文]

[字形] 形声
声符は(賓)(ひん)。は神を賓迎する礼を示す字であるから、嬪の初義は、神を迎え、神によりそう女をいうものであろう。〔説文〕十二下に「するなり」と双声を以て解し、〔爾雅、釈親〕に「なり」、また〔釈名、釈親属〕に「天子の妾に嬪り。嬪はなり。妾の中、せらるるなり」と妾御の意とする。天子に九嬪あり、のち女官の名に用いる。〔礼記、曲礼下〕に「生にはと曰ひ、母と曰ひ、妻と曰ふ。死には考と曰ひ、妣(ひ)と曰ひ、嬪と曰ふ」とあって、死者の美号とする。

[訓義]
1. そう、よりそう、神につかえる女。
2. そばめ、天子のそばめ、つま。
3. 婦人、女官。
4. 賓と通用する。

[古辞書の訓]
名義抄〕嬪 ヨメツカヘ・ナイシ 〔字鏡集〕嬪 ヨメツカヘス・ヨメ

[熟語]
嬪娥嬪妓嬪御嬪侍嬪従嬪妾・嬪・嬪人・嬪然嬪則嬪徳嬪妃・嬪・嬪儷
[下接語]
貴嬪・九嬪・玉嬪・三嬪・衆嬪・庶嬪・妃嬪・肥嬪・来嬪・良嬪

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改訂新版 世界大百科事典 「嬪」の意味・わかりやすい解説

嬪 (ひん)

天皇のキサキの称。後宮職員令では,(ひ),夫人(ぶにん)の下位に位置づけられ,定員は4名,五位以上とされた。ただし,これが現実に置かれた例はごく少なく,文武朝における紀竈門,石川刀子娘の2名を認めうるにすぎない。その名称は《周礼》の後宮制度における〈九嬪〉に由来する。令制においては女官の封禄は男子の禄を半減する原則であったが,嬪以上の場合はとくに全給されることとなっていた。
後宮
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「嬪」の意味・わかりやすい解説


ひん

令(りょう)制の後宮において妃・夫人の下位を占める身位。三位(さんみ)以上の夫人に対し、四位・五位の者をあて、定員は4人とする。嬪の称は中国隋(ずい)唐の制に由来し、『日本書紀』にも数例みえるが、大宝(たいほう)令制定後は、文武(もんむ)天皇の後宮に紀竈門娘(きのかまどのいらつめ)、石川刀子娘(とねのいらつめ)の2人を数えるだけで、その後の実例は見当たらない。しかし養老(ようろう)令をはじめ、延喜式(えんぎしき)にもその待遇に関する規定が存するから、制度としては平安中期まで存続したことがわかる。

[橋本義彦]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「嬪」の解説


ひん

和訓はミメといい,御妻を意味する。キサキの一つ。嬪の字は「周礼(しゅらい)」の九嬪に由来し,中国の唐制の影響がみられる。後宮職員令に妃・夫人・嬪の順に記され,定員は4人で五位以上とされた。実例は少なく,文武朝の紀竈門娘(きのかまどのいらつめ)と石川刀子娘(とすのいらつめ)だけが知られるが,2人とものちに嬪の号を奪われた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【後宮】より


[中国]
 天子が家庭生活を営む宮殿で,政務をつかさどる外朝とは機構的にも空間的にも区別されるのが原則であった。天子は皇后のほか多数の妃嬪(ひひん)を抱えたが,すべて後宮に住んだので,皇后以下を後宮とよぶことがある。《礼記(らいき)》昏義に,古代には皇后が六宮を建て,3夫人,9嬪,27世婦,81御妻をひきいて内治をつかさどり,婦徳を明らかにしたとあり,後世の後宮制度の規範となった。…

※「嬪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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