小説家。明治25年2月1日、北海道石狩郡厚田(あつた)村(現石狩市)に生まれる。本名梅谷松太郎。父母とは縁が薄く祖父母に養育された。画家三岸好太郎(みぎしこうたろう)は異父弟にあたる。祖父梅谷十次郎(通称斎藤鉄五郎)は彰義隊員として敗亡の身を厚田に定住させた。北海中学を経て、1914年(大正3)明治大学法学部卒業。釧路(くしろ)毎日新聞社入社。18年上京し読売新聞社に入社、千葉亀雄、沢田撫松(ぶしょう)らと親交を結ぶ。26年東京日日新聞社に転籍。史実と巷説(こうせつ)を現地踏査によって再構成し、新選組の隊士らの実相を描いた『新選組始末記』(1928)、『新選組遺聞』(1929)、『新選組物語』(1932)の三部作を完成。33年(昭和8)以来文筆専業となる。高橋泥舟(でいしゅう)の生涯を綴(つづ)った『逃げ水』(1959)、勝小吉(こきち)・麟太郎(りんたろう)(海舟(かいしゅう))父子を描いた『父子鷹(おやこだか)』(1955~56)、『おとこ鷹』(1960)など幕末遺臣と江戸への挽歌(ばんか)を点綴(てんてつ)した一連の作品により第10回菊池寛賞を受賞(1962)。随筆集『ふところ手帖(てちょう)』(1961)も好著として知られる。昭和43年7月19日没。
[山崎一穎]
『『子母沢寛全集』全25巻(1973~75・講談社)』▽『尾崎秀樹著『子母沢寛――人と文学』(1977・中央公論社)』
昭和期の小説家
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
小説家。幕末維新物,仁俠物を得意とした。北海道石狩郡厚田村の生れ。本名梅谷松太郎。異父弟に画家の三岸好太郎がいる。明治大学卒業後しばらく釧路や札幌などで地方紙や木材会社に勤めたが,1918年再度上京して読売新聞社会部に入り,26年さらに東京日日新聞に転じた。在社中から新聞の囲みものなどを手がけ聞書形式を生かしたスタイルを定着させ,新選組や遊俠の徒の調査研究に力を注ぐ。28年《新選組始末記》を刊行して注目され,《弥太郎笠》(1931),《菊五郎格子》(1932),《国定忠治》(1932-33)などをつぎつぎに発表して股旅物に新境地を開いた。また《突っかけ侍》(1934-36)を連載するころからしだいに白浪物,幕末物もふえ,《勝海舟》(1941-46,間に休載期をふくむ)を長期にわたって書きつぐ過程で戦後の幕末物が開花した。《父子鷹(おやこだか)》《逃げ水》《おとこ鷹》《駿河遊俠伝》などの話題作がある。
執筆者:尾崎 秀樹
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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