宇久島(読み)うくじま

日本歴史地名大系 「宇久島」の解説

宇久島
うくじま

五島列島の北にある島。南方に小値賀おぢか島、東方に平戸島がある。面積二四・八九平方キロ。当島などを含めた五島列島で確認された三九ヵ所の遺跡のうち北部の宇久島・小値賀島に二五遺跡があって、中部・南西部より分布数が多いことが注目される。しろヶ岳の南麓にあるじよう岳平子たけひらこ遺跡では宇久島型として標式化されている黒曜石製細石核や細石刃とともに、隆線文土器・押引線文土器が出土、旧石器時代から縄文時代にかけての遺跡とされる。東部の長崎鼻ながさきばな遺跡は縄文時代中期を主体とする遺跡で、曾畑式・轟式の土器などの出土から九州文化圏のうちであった。西海岸にあるみやくび貝塚の縄文時代の炉跡から巻貝・鮑の殻など、後期の文化層からは鯨の骨が出土している。宇久松原うくまつばら遺跡の支石墓では朝鮮半島南部の無文土器の影響が強い小型壺形土器(夜臼式土器に属する)が発見されているほか、甕棺・箱式石棺・土坑墓が出ている。また南海産の貝輪・垂飾品などから、南九州の文化の受容が知られる。古墳時代後期から奈良時代にかけての貝塚(第一七試掘壙)では大型の鮑の加工が盛んであったことがうかがえる。宮ノ首貝塚の古墳時代後期から奈良時代にわたる層から馬歯・馬骨が出土、五世紀に馬がいたと想定できる。また同じ時期の貝層から大型鮑が帯状に詰まった状態で検出されており、鮑とりを専業とする集団がいたことも考えられ、「魏志倭人伝」のいう水人、「肥前国風土記」にみえる白水郎にも通じる海民であろう。彼らはやがて干鮑の貢納を行う値賀ちか島の贄人として史料に現れてくる。「肥前国風土記」に記される小近は小値賀島とともに宇久島などを含むものとされる。

〔中世〕

中世は宇野うの御厨のうちで、松浦氏の一族宇久氏の拠点となり、のちの五島氏の発祥の地として知られる。建武元年(一三三四)六月二七日の某沙汰事書案(青方文書、以下断りのない限り同文書)の紙背に記された嘉禎年間(一二三五―三八)頃と推定される某安堵下文案断簡に「宇野御厨宇久島」とみえ、宇久家盛の娘源氏が、貞永二年(一二三三)八月三日の亡父宇久源太郎家盛法師の譲状、ならびに嘉禎二年一二月日の舎弟扇の状にまかせて島内の屋敷田畠を安堵されている。鎌倉後期(弘安年間か)と推定される青方能高・峰湛相論文書案に「うくのしま」とみえ、小値賀島地頭職の峰氏と同下沙汰職の青方氏の相論に際して、守護使節の越前房了恵が浦部うらべ(中通島)と海上渡海一日の距離にある宇久島に赴いたという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇久島」の意味・わかりやすい解説

宇久島
うくじま

長崎県西部、五島列島の北方にある島。佐世保市(させぼし)に属する。面積24.92平方キロメートル。もとは寺島などの属島とともに旧宇久町(面積26.40平方キロメートル)を形成していたが、2006年(平成18)佐世保市に編入した。玄武岩の台地上に、城(じょう)ヶ岳(259メートル)を噴出した火山島で、台地と火山体の境界線上には、湧水(ゆうすい)による溜池(ためいけ)が分布している。島の東部には長崎鼻や野方(のがた)の台地が広がり、西部には平原の台地が広がっている。人口2878(2009)。

[石井泰義]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇久島」の意味・わかりやすい解説

宇久島
うくじま

長崎県五島列島北方の島。西方の寺島とともに佐世保市に属する。城ヶ岳 (259m) を主体とする低平な火山岩からなり,広大な牧野をもつ畜産と畑作の島。五島藩の祖宇久氏発祥の地で,江戸時代は五島藩に属した。中心集落の平,および南西部の神浦におもな漁港があり,一本釣り,延縄漁業,貝採取などが行なわれる。北岸一帯は西海国立公園に属する。

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デジタル大辞泉プラス 「宇久島」の解説

宇久島

長崎県、五島列島の北端に位置する平戸諸島の島。面積約24.93平方キロメートル。長崎県佐世保市に属する。壇ノ浦の戦いで平家が敗れたのち、平清盛の弟・家盛がこの島に渡って領主となり宇久家盛を名乗ったとの言い伝えがあり、島内には関連史跡が多い。宇久氏はのちに五島全体を治めた五島氏の祖にあたる。島南部に市の天然記念物に指定られているアコウの巨木がある。

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