静岡市の名物、きな粉餅。静岡市葵(あおい)区弥勒(みろく)の旧東海道(現県道208号)が安倍川にさしかかる所に数軒の餅屋がある。なかでも石部屋(せきべや)は慶長(けいちょう)年間(1596~1615)の創業で、15代ののれんを誇る。安倍川餅の由来は、東海道往還の旅人が、安倍川の渡しで、川越人足を待つ間に、茶店で一服の際に供されたのに始まる。焼き餅を湯にくぐらせたうえ黒蜜(くろみつ)に浸し、きな粉をまぶして食べさせたのが評判をとり、全国に伝えられた。作り方が簡単なので一般家庭に普及し、いつしか、きな粉餅そのものを「あべかわ」と称するようになった。十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』(1809)にも、「ほどなく弥勒といへるにいたる。ここは名におふ安倍川餅の名物にて、西側の茶屋、いづれもきれいにはなやかなり」と繁盛ぶりが描写されているが、現在の安倍川餅は、餡(あん)餅や、静岡名産のわさびをきかせたしょうゆと大根おろしのからみ餅も好評である。
[沢 史生]
静岡市西部,安倍川河畔の茶店の名物として知られた餅。つきたての餅をちぎって砂糖入りのきな粉をまぶしたもので,慶安年間(1648-52)にはじまるともいうが確証はない。しかし,東海道をたびたび往来したことのある8代将軍徳川吉宗はよく知っており,当時の御賄頭(おまかないがしら)の古郡孫太夫が駿河からもち米を取りよせて調進したところ大いに嘉賞されたと,江戸南町奉行でもあった根岸鎮衛(やすもり)(1737-1815)はその著《耳囊(みみぶくろ)》に書いている。東海道屈指の名物であったことから,やがて焼いた餅を湯にひたしてきな粉をまぶしたものを,一般に安倍川餅,あるいは略して単に安倍川と呼ぶようになった。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新