室戸市(読み)ムロトシ

デジタル大辞泉 「室戸市」の意味・読み・例文・類語

むろと‐し【室戸市】

室戸

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「室戸市」の解説

室戸市
むろとし

面積:二四八・五〇平方キロ

高知県の南東端にあり、市域室戸岬を要として細目に開いた扇の形をなす。西の足摺あしずり岬と相対して土佐湾を抱き、黒潮の海に突出した準無霜地帯。岬端に向かって折重なる険しい山地のひだを数本の小河川が流れ、その流域の狭い谷間と、有史以前から続いてきた隆起運動により形成された帯状の海岸平野が、人々の生活の場である。市域は旧安芸郡を割いたもので、北は安芸郡奈半利なはり町・北川きたがわ村・東洋とうよう町に接し、南は太平洋。市名は古代から知られた室戸岬の名による。

〔古代・中世〕

全体に険しい地勢ゆえか、市域にはめぼしい考古遺跡の発見はない。わずかに室津むろつ川下流域が早くから開かれ、紀貫之が承平五年(九三五)風待ちで船をとどめた「むろつ」の湊があり、この地は「和名抄」所載の室津郷の中心であった。「続日本紀」神護景雲元年(七六七)六月二二日条に、奈良西大寺に稲二万束と牛六〇頭を献じ、外従五位上を受けたとある凡直伊賀麻呂はこの地に住み、その祖神を祀ったのが「延喜式」に記される室津神社であるともいわれる。

平安時代の初め、讃岐出身の青年僧空海は「室戸崎」(三教指帰)を修行の地とし、そのゆかりにより室戸岬に最御崎ほつみさき(東寺)行当ぎようど岬に金剛頂こんごうちよう(西寺)が建てられた。これらの寺が勅願所ともなると当市域はその勢力下に置かれた。この二つの真言宗寺院は住持が兼帯するなど密接な関係を保つが、市域の古い社寺はいずれも岬東では東寺、岬西では西寺につながる縁起をもつ。それらの寺院を結ぶ海岸沿いの道はのちに四国遍路の道となるが、空海の盛名と、南海に突出した険しい地形により、早くから信仰の霊地として僧俗が集まった。「梁塵秘抄」に全国七つの霊験所の一として「室生門」が記される。しかし土佐国府(現南国市)方面への主要ルートは室戸岬回りの海上の道であり、陸路は市域北の野根のね山越であって、その当時市域に足を踏入れたのは多く修行者や遍路などで、一般的にはあまり顧みられることのない地であったのはいうまでもない。

それでも中世に入ると寺領のうちに武士勢力が台頭、本来市域一円が先述の二寺の寺領とされたものが、荘園として分化する。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「室戸市」の意味・わかりやすい解説

室戸〔市〕
むろと

高知県南東部,室戸岬一帯を含む市。 1959年室戸,室戸岬,佐喜浜,吉良川の4町と羽根村が合体して市制。中心市街地の室津は,古くから漁業集落を形成し,江戸時代には藩の保護を受けて捕鯨が発達した。産業の中心は漁業で,近年まで遠洋のマグロ漁業の基地として知られた室津港,室戸岬港などがある。冷凍加工,かつお節などの工場が立地。農村部では温暖な気候を利用して野菜の促成栽培,果樹栽培が行われる。台風の襲来が多いことから,岬周辺は防波堤,通信施設など全国有数の施設をもつ。四国八十八ヵ所第 24番札所最御崎寺,第 25番札所津照寺,第 26番札所金剛頂寺などがある。タチバナ,室戸岬亜熱帯性樹林および海岸植物群落は天然記念物。岬を中心とした市域南端と海岸の大部分は名勝に指定され,室戸阿南海岸国定公園に属する。海岸部を国道 55号線が通る。面積 248.22km2。人口 1万1742(2020)。

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