能書で知られる南北朝時代の僧侶(そうりょ)。伏見(ふしみ)天皇の第六皇子、母は修理大夫三好俊衡(しゅりだゆうみよしとしひら)の娘衡子(ひらこ)(播磨内侍(はりまのないし))。1308年(延慶1)青蓮院(しょうれんいん)に入って親王宣下を受け、尊彦(たかひこ)と名のった。11年(応長1)大成院において薙髪(ちはつ)入道し、名を尊円と改め青蓮院門跡(もんぜき)となる。以後、常寿院別当、無動寺三昧(むどうじさんまい)院検校(けんぎょう)を経て、31年(元弘1)天台座主(ざす)となって以来、四たびその任についた。書は世尊寺行房(せそんじゅきふさ)・行尹(ゆきただ)兄弟に教えを受けて伏見天皇譲りの天賦の才を磨き、また上代(じょうだい)様の書を自ら学び、さらに宋(そう)の張即之(ちょうそくし)の書風を加味して、古典に立脚した独自の書風を完成した。以後、その書風は青蓮院流として一つの大きな書流となり、江戸時代には御家(おいえ)流と名を変えて、後世まで永い命脈を保った。その著『入木抄(じゅぼくしょう)』は後光厳(ごこうごん)天皇のために撰進(せんしん)したものであるが、法親王の書道観が述べられたもので注目される。真跡は懐紙、消息など多数が伝存する。
[島谷弘幸]
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