特殊文庫(研究者に制限づき公開)。東京都目黒区駒場にある。加賀前田家伝来の典籍文書その他の文化財を護持し(和書7500部・漢籍4100部。国宝 王羲之《孔侍中帖》等22点,重文 《釈日本紀》等72点),財団法人前田育徳会が運営する。前田家5代松雲公(しよううんこう)綱紀(つなのり)(1643-1724)は,書誌学者と言ってもよく,和漢韓・写本刊本諸種の貴重な典籍文書を蒐集しあるいは影写し,それが今日,文庫の中核であって,庫名も綱紀が自分の代の収穫について尊経閣の名を付けたのを拡張応用した。(育徳会も綱紀が江戸本郷邸の園池を育徳園と号したのにちなむ。)財団を設立したのは16代利為(としなり)(1885-1942)で,関東大震災にかんがみ,善本の覆製(《尊経閣叢刊》)を志すのが当初の目的であった。今は《前田育徳会尊経閣文庫編刊書》等を刊行する。蔵品中,美術工芸品は石川県立美術館の専用展示室に陳列される。
執筆者:太田 晶二郎
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加賀藩前田氏の私文庫。5代藩主前田綱紀(つなのり)(1643―1724)は祖父利常(としつね)の遺志を継ぎ文化事業を推進した。その一つが図書の収集であり、書物調奉行(しょもつしらべぶぎょう)(書物才覚(さいかく)奉行)に命じて、皇室、公卿(くぎょう)、幕府、大名をはじめ、古社寺、名家旧家、蔵書家の収蔵する和書・漢籍・蘭書(らんしょ)の刊本・写本、古筆、絵巻物、令状、古書簡などを調査させ、必要な書物・史料は購入、購入不可能なものは書写させた。1926年(大正15)以来前田育徳会が管理運営にあたっている。正確な冊数は明らかでないが、明治維新に際し相当量が散逸したといわれながら、なお数十万冊が収蔵されている。所在地は東京都目黒区駒場(こまば)。
[田中喜男]
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出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
…各地の藩学付属の文庫,大名の個人文庫にも注目すべきものがある。前者では尾張の明倫堂,熊本の時習館,米沢の興譲館,鹿児島の造士館などが,後者では前田家の尊経閣文庫,蜂須賀家の阿波国文庫などが知られる。 以上のような漢籍中心の文庫が栄える一方,江戸時代も後期になると国書への関心が高まり,塙保己一の申出による中国の《漢魏叢書》をモデルにした国書の類集編纂に対して幕府は助成を行う。…
※「尊経閣文庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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