甲冑(かっちゅう)を構成する主要材料。中世には札(さね)(真、実、核とも記す)と称したが、江戸時代より板物(いたもの)の札に対し小札とよぶようになった。鉄や革を短冊状に細く断ち、上辺を斜めに削(そ)ぎ13孔を2列にあけて漆を塗る。上の5孔は威し立(おどしだて)の、下の8孔は下緘(したがらみ)の孔である。小札の丈を札足(さねあし)、上部を札頭(さねがしら)という。札幅の約半分ずつをずらして重ね、革紐(かわひも)で横に緘み、甲冑の部位に応じた横長の板をつくり、漆で塗り固め、上下に威し連ねる。また19孔を3列にあけた三つ目札と称されるものがあり、初期の大鎧(おおよろい)に使用された。小札の寸法は時代の推移にしたがい、しだいに小形化した。札足は5~8センチメートルでさほど変化はないが、幅は平安後期には4~5センチメートル(1978年、京都市法住寺殿跡より幅9センチメートルの札が出土した)を普通としたが、室町末期には1センチメートルほどの細(こま)か札を生じ、札頭に漆を盛って補強することが行われた。いわゆる盛上本(もりあげほん)小札で、室町時代に盛行した。このほか金箔(きんぱく)や銀箔押しにした金小札、銀小札、朱塗りの朱(あか)小札などがある。鎌倉末期ごろに、小札を簡略化して、両側をすこしずつ重ねて縫い延べる伊予(いよ)札の考案があり、胴丸・腹巻のほか近世の当世具足に用いられ、また、室町末期より鉄や革の一枚板でつくった板札の使用が盛んになった。
[山岸素夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…古く《東大寺献物帳》には貫(ぬき),《延喜式》には懸緒(かけお)と記してある。すなわち甲冑を構成するのに,小札(こざね)を端から半ば重ね合わせて並列し,下方の緘孔(からみあな)で横綴じした小札板を一段一段上下に連ねて綴じる線を威毛といい,とくに小札板の両端を通す線を耳糸,草摺(くさずり)やの裾板(すそいた)の下方の孔を横にたすきに綴じたのを菱縫(ひしぬい)と称している。 威毛の手法を大別すると,縦取威と縄目威があり(図),縦取威は小札頭の1段目と2段目の孔の表に威毛が縦に通っているもので,古墳出土の挂甲(けいこう),正倉院伝来の挂甲残欠にみられ,上代甲冑のいちじるしい特色である。…
…小札(こざね)を綴り合わせて作った伸縮性をもつ甲(よろい)。騎兵用の武具として発達したもの。…
※「小札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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