威し(読み)おどし

精選版 日本国語大辞典 「威し」の意味・読み・例文・類語

おどし【威・脅・嚇】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おどす(威・脅)」の連用形の名詞化 )
  2. おどすこと。恐れさせること。
    1. [初出の実例]「事の由を在国司基衡にふれけり。此事おどしにこそせさせたりけれ」(出典:十訓抄(1252)一〇)
  3. 相手に不利な材料をもとにして金品をゆすったり、害を加えると通知して特定の行為を迫ったりすること。恐喝脅迫
    1. [初出の実例]「これ位な嚇しに乗せられて、尻込みするやうな自分ではない」(出典:西郷隆盛(1918)〈芥川龍之介〉)
  4. 田畑にくる鳥獣をおどすために作ったもの。案山子(かかし)などの類。鳥おどし。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「用心におどしに、にんぎゃうを作ておかふ」(出典:虎明本狂言・瓜盗人(室町末‐近世初))

おどしをどし【威・縅】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おどす(威・縅)」の連用形の名詞化。「緒通し」の意 ) 鎧の札(さね)を糸や皮でつづること。また、そのもの。その威しつづった配列状態が毛を伏せたようなので威毛(おどしげ)、また、毛(け)ともいう。材料によって、糸威革威綾威、練貫(ねりぬき)威などがあり、つづり方によって荒目、毛引、素懸(すがけ)、敷目などといい、色によっては緋威小桜威、黒革威、卯の花威の一色や色まぜによる紫裾濃(すそご)威、萌葱匂(もえぎにおい)威などがある。貫緒(ぬきお)。貫(あみつら)
    1. [初出の実例]「黒皮縅の鎧に、同じ毛の五枚冑を猪頸に着」(出典:保元物語(1220頃か)中)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「威し」の意味・わかりやすい解説

威し
おどし

上古,奈良時代の挂甲,平安時代以後の甲冑小札 (こざね) を縦 (上下) に連結する糸と革 (韋) のこと。「緒通し」の意味で,それに用いる糸や革を威し毛という。初めに小札を横に綴じて横板状とし,これを上下に連結する。威し毛には革,組糸,綾裂 (あやぎれ) を用いる。綴り方には挂甲にみる縦取り威し,中世にもっぱら用いられた毛引き威し,胴丸腹巻当世具足にみられる素がけ,寄素がけなどの手法がある。大鎧,胴丸,腹巻などで最も装飾性を発現しているのは威しの色目で,革の染文様,組糸の文柄から「小桜革黄返し威し」などと称し,色彩からは「紺糸威し」「緋威し」,さらに数色の組合せによって「色々威し」「沢瀉 (おもだか) 威し」などの名称があり,優雅な趣を添えている。

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