デジタル大辞泉
「札」の意味・読み・例文・類語
さね【▽札】
鎧を構成する細長い小板。鉄または革製で、1領に800~2000枚をうろこ状に連結して鎧を作る。こざね。
ふみた【▽札/▽簡】
《「ふみいた(文板)」の音変化》ふだ。
「広さ一尺許りの板の―あり」〈霊異記・下〉
ふんだ【▽札】
《「ふみた(札)」の音変化》文字を記した板。ふだ。
「四尺の―を負ふ」〈霊異記・中〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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ふだ【札・簡】
- 〘 名詞 〙 ( 「ふみいた(文板)」の変化した語 )
- ① ある目的のために必要な事項を書き記した小さい木片・紙片・金属片など。ふみた。
- [初出の実例]「又金(こかね)の策(フタ)を福信に予(たま)ひて」(出典:日本書紀(720)天智元年五月(北野本訓))
- ② 朝廷で、出仕した者の氏名を毎日確認し、その勤務日数を知るために用いた大型の木簡。日給(にっきゅう・ひだまい)の簡。
- [初出の実例]「又成二出納・史生・蔵人等雑任一、女方簡初書二日給一」(出典:御堂関白記‐寛仁元年(1017)八月一五日)
- ③ 閻魔王庁に備えられているという帳簿で、死者生前の所業を記したもの。鬼録。
- [初出の実例]「炎魔王界にて、倶生神の札、浄婆利の鏡に引向て」(出典:米沢本沙石集(1283)九)
- ④ 町中などに高く立てる板札。高札。また、制札。禁札。
- [初出の実例]「下御社鳥居内立レ簡、其銘云、神宣云、惟憲朝臣太政大臣家事執行不レ堪」(出典:小右記‐長和三年(1014)四月二七日)
- ⑤ 神仏の守札。お札。おまもり。
- [初出の実例]「仁王講以下執行、札多地家え被レ下、さ様儀により虫漸々に喰止了」(出典:鵤荘引付‐明応七年(1498))
- ⑥ 質物と引き換えに質屋が交付する証券。質札。
- [初出の実例]「是にも札(フダ)書事のむつかしやといひさま、銭十六文かしければ」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)五)
- ⑦ 入場券。木戸札。また、乗車券。
- [初出の実例]「人に札もろふて又大夫が舞の芝居へ行といへば」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)一)
- ⑧ 鑑札。手形。
- [初出の実例]「左兵へ札をとりあげ申候」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)四月一七日)
- ⑨ 商品の広告、開店・売り出しの知らせなどを書いて配ったり、張ったりするもの。ちらし。びら。引札(ひきふだ)。
- [初出の実例]「仲条は札もながれるとこへはり」(出典:雑俳・柳多留‐四九(1810))
- ⑩ 花札やカルタやトランプなどの、絵や文字を書いた厚手の紙片。
- [初出の実例]「札うち初る三熊野の山 読かるた馬のかよひはなかりけり〈西鶴〉」(出典:俳諧・物種集(1678))
- ⑪ 巡礼が札所の柱や壁などに祈願のために貼る紙片。
- [初出の実例]「めぐるもののしなじな〈略〉三十三番の札(フダ)を打にめぐるは、順礼」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)下)
- ⑫ 江戸時代、岡場所で、芸娼妓の名を記して、娼家や検番に掲げておく名板。→札を引く。
- [初出の実例]「まア、札を持てきたがいい」(出典:洒落本・青楼楽美種(1775)茶屋のてい)
- ⑬ 「しまいふだ(仕舞札)」の略。
- [初出の実例]「『伴内様御仕廻かる』と札が下げてあるを」(出典:洒落本・祇園祭挑燈蔵(1802)大詰)
- ⑭ 「いれふだ(入札)」の略。
さつ【札】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① ふだ。また、書状。手紙。
- [初出の実例]「余帰レ家後、以レ札〈敦任奉〉遣二俊雅朝臣一」(出典:台記‐康治二年(1143)五月二五日)
- 「札・楮、二牌、札を原牌と為し、楮を影牌と為す」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)
- ② 紙幣のこと。江戸時代は、兌換の対象によって、銀札、金札、銭札、米札などがあり、大名、旗本、寺社、公家、町村、あるいは信用ある個人などにより発行され、一定地域内やその信用力の範囲内に流通した。明治以後、政府により太政官札、民部省札が発行され、明治一五年(一八八二)からは日本銀行券が主体となった。
- [初出の実例]「領内にて金銀札遣仕候分は、いつ頃より札遣仕来候哉」(出典:御触書寛保集成‐二五・宝永二年(1705)八月)
- 「彼女は手垢の付いた皺だらけの紙幣(サツ)を、指の間に挟んで」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉五三)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 文書、書状、手紙、証文、手形などを数えるのに用いる。
さね【札】
- 〘 名詞 〙 騎射用の甲冑(かっちゅう)を構成する細長い板。甲板、甲札、甲葉ともいう。鉄または革で作り鉄札、革札といい、一領に八百枚から二千枚を連結して作る。一枚に二行一三の孔を普通とし、下の八孔を左右連結の横縫いにする孔、上の五孔を上下に続ける威(おどし)の孔とする。形によって、荒目(あらめ)札、敷目(しきめ)札、平(ひら)札、盛上(もりあげ)札、伊予札、小札、細(こまか)札などの種類がある。
- [初出の実例]「いくさといへば、さねよき鎧きせ、おほ太刀・つよ弓もたせて」(出典:平家物語(13C前)九)
札の補助注記
古くは木片であった可能性が高く、木製品であったならば、甲冑を付ければ、松の実のように頑丈であるという構造上・機能上の類似性から、植物の実と同じく「サネ」と訓じたと思われる。
ふんだ【札】
- 〘 名詞 〙 ( 「ふみた(札)」の変化した語。「ふむだ」とも表記 ) =ふだ(札)
- [初出の実例]「兵士の腰を見れば、四尺の於(フムダ)を負ふ。〈国会図書館本訓釈 杜 布牟太〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
ふみた【札・簡】
- 〘 名詞 〙 ( 「ふみいた(文板)」の変化した語 ) 文字を書いた板や紙。ふだ。
- [初出の実例]「長さ二尺許、広さ一尺許の板の札(フミタ)有り。〈前田家本訓釈 札 不美多〉」(出典:日本霊異記(810‐824)下)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「札」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の札の言及
【胴丸】より
…胴の前後を覆って,右脇で深く引き合わせ,裾に8枚の草摺(くさずり)を付属する。札(さね)とよぶ牛の撓革(いためがわ)または鉄の小片を横につらねてつづり合わせ,さらに縦に胴まわりを衡胴(かぶきどう)といって4段,立挙(たてあげ)といって正面上部の胸板につづく2段と背面上部の押付(おしつけ)につづく3段,草摺を5段,それぞれ革緒や糸の組緒で札を1枚ずつ細かに威(おど)しつけるのを常とする。草摺を8枚に分けているのは歩行しやすいためであり,13世紀末ころまでは,もっぱら歩兵用として兵卒の間に用いられた。…
※「札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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