(読み)フダ

デジタル大辞泉 「札」の意味・読み・例文・類語

ふだ【札/簡】

《「ふみいた(文板)」の音変化》
目的とする内容などを簡単に書いて、人に示したり渡したりする紙片や木片。「遊泳禁止の―を立てる」「質―」
神仏の守り札。「魔除けの―」→御札おふだ
娯楽場などの入場券。また、乗車券、切符。「芝居の―」
「電車の―を入れる箱」〈鴎外・田楽豆腐〉
カルタトランプ花札などの、1枚1枚の紙片。「―を裏返しに配る」「絵―」
巡礼などが、祈願のために札所の柱・扉・壁などに貼る紙片。「千社―」
日給にっきゅうふだ」に同じ。
「暫しも滞るをば御―を削らせ給ひ」〈栄花・花山尋ぬる中納言〉
[下接語]合い札赤札入れ札氏子札打ち札絵札大札納め札掛け札貸家札かど木札切り札極め札くじ配り札下馬げば小札護摩ごま下げ札質札しょう捨て札千社札立て札つじ手札取り札名札荷札値札花札場札貼り札引き札迷子まいご守り札むねめくり札宿やど・山札・読み札割り札
[類語]カードラベルレッテル荷札名札貼り札貼り紙付箋鑑札伝票証票証紙割り符ステッカーゼッケンシールワッペンタグネームプレート

さつ【札】[漢字項目]

[音]サツ(漢) [訓]ふだ さね
学習漢字]4年
〈サツ〉
文字を書いた板切れ。「表札門札
書き付け。証文。手紙。「一札鑑札書札入札
紙幣。「贋札がんさつ・にせさつ
切符。「改札出札
〈ふだ〉「名札荷札
[名のり]ぬさ

さつ【札】

[名]紙幣。
[接尾]助数詞。書状・証文などを数えるのに用いる。「証文を一入れる」
[類語]紙幣札びら札束新札新券ぴん札

さね【札】

よろいを構成する細長い小板。鉄または革製で、1領に800~2000枚をうろこ状に連結して鎧を作る。こざね。

ふみた【札/簡】

《「ふみいた(文板)」の音変化》ふだ。
「広さ一尺ばかりの板の―あり」〈霊異記・下〉

ふんだ【札】

《「ふみた(札)」の音変化》文字を記した板。ふだ。
「四尺の―を負ふ」〈霊異記・中〉

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精選版 日本国語大辞典 「札」の意味・読み・例文・類語

ふだ【札・簡】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ふみいた(文板)」の変化した語 )
  2. ある目的のために必要な事項を書き記した小さい木片・紙片・金属片など。ふみた。
    1. [初出の実例]「又金(こかね)の策(フタ)を福信に予(たま)ひて」(出典:日本書紀(720)天智元年五月(北野本訓))
  3. 朝廷で、出仕した者の氏名を毎日確認し、その勤務日数を知るために用いた大型の木簡日給(にっきゅう・ひだまい)の簡。
    1. [初出の実例]「又成出納・史生・蔵人等雑任、女方簡初書日給」(出典:御堂関白記‐寛仁元年(1017)八月一五日)
  4. 閻魔王庁に備えられているという帳簿で、死者生前の所業を記したもの。鬼録。
    1. [初出の実例]「炎魔王界にて、倶生神の札、浄婆利の鏡に引向て」(出典:米沢本沙石集(1283)九)
  5. 町中などに高く立てる板札。高札。また、制札。禁札。
    1. [初出の実例]「下御社鳥居内立簡、其銘云、神宣云、惟憲朝臣太政大臣家事執行不堪」(出典:小右記‐長和三年(1014)四月二七日)
  6. 神仏の守札。お札。おまもり。
    1. [初出の実例]「仁王講以下執行、札多地家え被下、さ様儀により虫漸々に喰止了」(出典:鵤荘引付‐明応七年(1498))
  7. 質物と引き換えに質屋が交付する証券。質札。
    1. [初出の実例]「是にも札(フダ)書事のむつかしやといひさま、銭十六文かしければ」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)五)
  8. 入場券。木戸札。また、乗車券。
    1. [初出の実例]「人に札もろふて又大夫が舞の芝居へ行といへば」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)一)
  9. 鑑札。手形。
    1. [初出の実例]「左兵へ札をとりあげ申候」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)四月一七日)
  10. 商品の広告、開店・売り出しの知らせなどを書いて配ったり、張ったりするもの。ちらし。びら。引札(ひきふだ)
    1. [初出の実例]「仲条は札もながれるとこへはり」(出典:雑俳・柳多留‐四九(1810))
  11. 花札やカルタやトランプなどの、絵や文字を書いた厚手の紙片。
    1. [初出の実例]「札うち初る三熊野の山 読かるた馬のかよひはなかりけり〈西鶴〉」(出典:俳諧・物種集(1678))
  12. 巡礼が札所の柱や壁などに祈願のために貼る紙片。
    1. [初出の実例]「めぐるもののしなじな〈略〉三十三番の札(フダ)を打にめぐるは、順礼」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)下)
  13. 江戸時代、岡場所で、芸娼妓の名を記して、娼家や検番に掲げておく名板。→札を引く
    1. [初出の実例]「まア、札を持てきたがいい」(出典:洒落本・青楼楽美種(1775)茶屋のてい)
  14. しまいふだ(仕舞札)」の略。
    1. [初出の実例]「『伴内様御仕廻かる』と札が下げてあるを」(出典:洒落本・祇園祭挑燈蔵(1802)大詰)
  15. いれふだ(入札)」の略。

さつ【札】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ふだ。また、書状。手紙。
      1. [初出の実例]「余帰家後、以札〈敦任奉〉遣俊雅朝臣」(出典:台記‐康治二年(1143)五月二五日)
      2. 「札・楮、二牌、札を原牌と為し、楮を影牌と為す」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)
    2. 紙幣のこと。江戸時代は、兌換の対象によって、銀札、金札、銭札、米札などがあり、大名、旗本、寺社、公家、町村、あるいは信用ある個人などにより発行され、一定地域内やその信用力の範囲内に流通した。明治以後、政府により太政官札、民部省札が発行され、明治一五年(一八八二)からは日本銀行券が主体となった。
      1. [初出の実例]「領内にて金銀札遣仕候分は、いつ頃より札遣仕来候哉」(出典:御触書寛保集成‐二五・宝永二年(1705)八月)
      2. 「彼女は手垢の付いた皺だらけの紙幣(サツ)を、指の間に挟んで」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉五三)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 文書、書状、手紙、証文、手形などを数えるのに用いる。

さね【札】

  1. 〘 名詞 〙 騎射用の甲冑(かっちゅう)を構成する細長い板。甲板、甲札、甲葉ともいう。鉄または革で作り鉄札、革札といい、一領に八百枚から二千枚を連結して作る。一枚に二行一三の孔を普通とし、下の八孔を左右連結の横縫いにする孔、上の五孔を上下に続ける威(おどし)の孔とする。形によって、荒目(あらめ)札、敷目(しきめ)札、平(ひら)札、盛上(もりあげ)札、伊予札、小札、細(こまか)札などの種類がある。
    1. [初出の実例]「いくさといへば、さねよき鎧きせ、おほ太刀・つよ弓もたせて」(出典:平家物語(13C前)九)

札の補助注記

古くは木片であった可能性が高く、木製品であったならば、甲冑を付ければ、松の実のように頑丈であるという構造上・機能上の類似性から、植物の実と同じく「サネ」と訓じたと思われる。


ふんだ【札】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ふみた(札)」の変化した語。「ふむだ」とも表記 ) =ふだ(札)
    1. [初出の実例]「兵士の腰を見れば、四尺の於(フムダ)を負ふ。〈国会図書館本訓釈 杜 布牟太〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)

ふみた【札・簡】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ふみいた(文板)」の変化した語 ) 文字を書いた板や紙。ふだ。
    1. [初出の実例]「長さ二尺許、広さ一尺許の板の札(フミタ)有り。〈前田家本訓釈 札 不美多〉」(出典:日本霊異記(810‐824)下)

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普及版 字通 「札」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

[字音] サツ
[字訓] ふだ

[説文解字]

[字形] 会意
木+(さつ)。は木の薄片の形。限定符として木を加え、木札の意とする。〔説文〕六上に「牒(てふ)なり」とし、乙(いつ)声とするが、声が異なる。〔説文〕の牒字条七上にも「札なり」とあって互訓。(よう)は木の葉のような薄片をいう。いずれも木簡として書冊の用に供する。

[訓義]
1. ふだ、木のふだ。
2. かきもの、かきつけ、ふみ。
3. 甲札、甲葉、よろいのさね。
4. 舟のかい、くし。
5. と通じ、えやみ、はやり病で死ぬ、若死に。

[古辞書の訓]
名義抄〕札 アザハレル・ナラヘル・フムタ

[語系]
札tzheat、牒dyapは声義に通ずるところがあり、いずれも木の葉のような薄片をいう。

[熟語]
・札記・札荒・札・札札・札児・札住・札書・札傷・札喪・札足・札牘・札文・札樸・札・札
[下接語]
一札・雲札・恩札・佳札・改札・開札・緘札・札・簡札・鑑札・贋札・貴札・綺札・旧札・凶札・玉札・金札・禁札・検札・甲札・高札・黄札・紙札・賜札・手札・出札・書札・制札・積札・札・草札・大札・駐札・投札・納札・藩札・飛札・筆札・表札・標札・焚札・片札・返札・芳札・榜札・木札・門札・夭札・落札・利札

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【胴丸】より

…胴の前後を覆って,右脇で深く引き合わせ,裾に8枚の草摺(くさずり)を付属する。札(さね)とよぶ牛の撓革(いためがわ)または鉄の小片を横につらねてつづり合わせ,さらに縦に胴まわりを衡胴(かぶきどう)といって4段,立挙(たてあげ)といって正面上部の胸板につづく2段と背面上部の押付(おしつけ)につづく3段,草摺を5段,それぞれ革緒や糸の組緒で札を1枚ずつ細かに威(おど)しつけるのを常とする。草摺を8枚に分けているのは歩行しやすいためであり,13世紀末ころまでは,もっぱら歩兵用として兵卒の間に用いられた。…

※「札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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