小池真理子(読み)コイケマリコ

デジタル大辞泉 「小池真理子」の意味・読み・例文・類語

こいけ‐まりこ【小池真理子】

[1952~ ]小説家東京の生まれ。人間内面日常にひそむ恐怖を描き出す心理サスペンス、ミステリー恋愛小説で人気を集める。「」で直木賞受賞。他に「あなたから逃れられない」「妻の女友達」「虹の彼方」、エッセー集「知的悪女のすすめ」など。夫の藤田宜永よしながも直木賞作家。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小池真理子」の意味・わかりやすい解説

小池真理子
こいけまりこ
(1952― )

小説家。東京都生まれ。小学校は東京、中学は西宮市、高校は仙台市と父親の仕事の関係で転々とする。成蹊大学文学部英米文学科卒業後、出版社に入社。1年半ほどの勤務後、フリーライターとして独立。1978年(昭和53)『知的悪女のすすめ』が出版されると、これが一大ベストセラーとなり、一躍人気エッセイストとなる。これ以後「知的悪女シリーズ」を次々と上梓、テレビ・ラジオ・雑誌・講演と活躍の場を広げていく。

 その後、フランスの作家カトリーヌ・アルレーCatherine Arley(1924― )を読んで触発され、いくつかのショート・ストーリーを発表した後、書き下ろし長編『あなたから逃れられない』(1985)で本格的にミステリー作家に転身。以後『彼女が愛した男』(1986)、『蠍(さそり)のいる森』『仮面マドンナ』『彼方悪魔』(1987)、『見えない情事』『プワゾンの匂う女』『墓地を見おろす家』『間違われた女』(1988)など次々と作品を発表し、1989年(平成1)「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短篇部門)を受賞、この分野でも並々ならぬ才能と実力のほどを証明する。小池作品の特徴は、事件や犯罪そのものではなく、犯罪者やその周囲にいる人間の内面に深く分け入りながら、どこにでもある日常の風景の中にいつしか目に見えない歪みが生じてくる恐怖が描かれるところにある。それはたとえば本当にありふれた日常――木々のざわめき、太陽光の屈折、犬の遠吠え、子供たちのはしゃぐ声、隣人のふとした何気ない視線、夫のあわてた仕種……といったどこにでも見られる生活上の延長線から抽出する恐怖である。

 1990年代の半ば頃から恋愛小説へと移行し始め、女子学生と大学助教授夫婦の奇妙な三角関係を描いた『恋』(1995)で第114回直木賞を受賞。『欲望』(1997。島清恋愛文学賞)、『水の翼』(1998)、『冬の伽藍(がらん)』(1999)、『ノスタルジア』(2000)、『狂王の庭』(2002)など、現在は三島由紀夫の衣鉢(いはつ)を継ぐ耽美派の俊英との評判をとる。私生活におけるパートナーは、やはり直木賞作家の藤田宜永(よしなが)であった。

[関口苑生]

『『ノスタルジア』(2000・双葉社)』『『狂王の庭』(2002・角川書店)』『『知的悪女のすすめ』『彼女が愛した男』『仮面のマドンナ』(角川文庫)』『『墓地を見おろす家』(角川ホラー文庫)』『『あなたから逃れられない』『妻の女友達』『蠍のいる森』(集英社文庫)』『『プワゾンの匂う女』『うわさ』(光文社文庫)』『『夜ごとの闇の奥底で』『欲望』『恋』『水の翼』『無伴奏』(新潮文庫)』『『彼方の悪魔』『見えない情事』(中公文庫)』『『冬の伽藍』(講談社文庫)』『『間違われた女』(祥伝社文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「小池真理子」の解説

小池真理子 こいけ-まりこ

1952- 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和27年10月28日生まれ。直木賞作家(平成13年受賞)藤田宜永の妻。出版社勤務をへて執筆活動をはじめ,昭和53年初エッセイ集「知的悪女のすすめ」がベストセラーとなる。その後心理サスペンス小説を手がけ,平成元年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞,8年「恋」で直木賞。18年「虹の彼方」で柴田錬三郎賞。25年「沈黙のひと」で吉川英治文学賞。東京都出身。成蹊大卒。作品はほかに「プワゾンの匂う女」など。

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