六訂版 家庭医学大全科 「尿道下裂」の解説
尿道下裂
にょうどうかれつ
Hypospadias
(腎臓と尿路の病気)
どんな病気か
原因は何か
胎生9週ころから男性ホルモン(テストステロン)が分泌され始め、これが陰茎・尿道の形成過程に関係します。尿道下裂の発生には胎児の
陰茎
症状の現れ方
出生時に外尿道口が亀頭部の先端に開いていないことで診断は容易ですが、その位置によって、亀頭部、
外尿道口が会陰、陰嚢などに開く場合、
検査と診断
従来から遺伝的要因、出生前環境因子が本疾患の発生に関係しているといわれています。そのため、家族内発生の有無や母親が妊娠中にプロゲステロンなどのホルモン剤やアスピリン、インドメタシンなどの解熱薬を使用したかどうかなどの聴取を行います。
家族内発生をみた場合には、
合併する異常としては、停留精巣などの陰嚢内容の異常、
治療の方法
基本的には手術による形成術が行われます。治療の目的は正常な排尿(立位による排尿)と将来の性生活にあります。また、患児の男性としての自覚、精神発達に大きな影響を及ぼすため、機能だけでなく美容上の面からも満足するようにすべきです。
手術は通常、日本では2~3歳で行われますが、欧米では10カ月前後で行われています。1~2歳で亀頭・包皮の発育が十分であれば対象になります。矮小陰茎ではテストステロン軟膏などで陰茎の発育を促します。
形成術には、索の切除をまず行ってから形成術を行う二期手術と、一期的に行う手術とがあり、200以上の術式があるといわれています。近年は縫合糸・マイクロ機器の発達で一期手術が多く行われています。
病気に気づいたらどうする
手術の時期は1~2歳以降になりますが、その他の合併奇形の有無を含めて、早期に小児泌尿器科医もしくは小児外科医に相談すべきです。
宮北 英司
尿道下裂
にょうどうかれつ
Hypospadias
(男性生殖器の病気)
どんな病気か
尿道の出口がペニスの先端になくて、ペニスの途中や
外見の問題だけでなく、立位での排尿ができない、将来的に性交渉に支障を来すなどの問題があります。軽症のものを含めると男児出生300~500人に1人の頻度でみられます。
原因は何か
先天性の病気で原因はよくわかっていません。胎生8~9週に尿道の原基となる溝ができ、9週ごろから胎児の
検査と診断
泌尿器科専門医の診察で診断は容易ですが、程度が高度な場合、
治療の方法
ごく軽度の場合を除いて手術が必要です。手術は屈曲を直し、包皮を用いて尿道を形成し、さらに必要な場合は
手術の合併症として、新しくつないだ尿道が狭くなったり、尿道の途中から尿がもれたりする問題が起こりやすく、再度手術が必要になることも少なくありません。
武田 光正
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報