尿道下裂(読み)にょうどうかれつ(その他表記)Hypospadias

家庭医学館 「尿道下裂」の解説

にょうどうかれつ【尿道下裂 Hypospadias】

[どんな病気か]
 体外に排尿するための外尿道口が、正常な位置よりも手前のほうに後退して開いているもので、外尿道口の位置により亀頭部下裂(きとうぶかれつ)、陰茎部下裂(いんけいぶかれつ)、陰嚢部下裂(いんのうぶかれつ)、会陰部下裂(えいんぶかれつ)に分類されます(図「尿道下裂のいろいろ」)。
 亀頭部下裂のような程度の軽いものがこの病気全体の60~70%以上をしめ、男児の出生数1000人に対し、1~数人程度みられます。
[原因]
 男性は胎生期(たいせいき)に、尿道溝の両側のへりが、正中線上で合わさって尿道がつくられるのですが、この癒合(ゆごう)がなんらかの理由で停止したものです。
 陰茎へのアンドロゲン(男性ホルモン)の作用が減少するためにおこるといわれています。このように、妊娠初期の性ホルモンの異常は、胎児たいじ)にさまざまな性器の異常をおこします。
[検査と診断]
 見ればわかるつぎのような症状や尿が異常なところから出てくるので、診断は簡単です。
①本来の正常な尿道口の位置から異常な尿道口までの形成がうまくいかなかった部分が、陰茎索(いんけいさく)(尿道海綿体(にょうどうかいめんたい)が線維化したもの)と呼ばれる伸展性の乏しい組織になっており、陰茎はそれに引っ張られて腹側に曲がり、短小になっています。
②尿道口はふつう、薄い皮だけで形成された小さな穴で、陰茎から陰嚢にいたる腹側の正中線上のどこかにあいています。
③亀頭には、堤防のような隆起がみられ、さまざまに変形し、余分な包皮頭巾(ずきん)のように陰茎の背側をおおう一方、陰茎の腹側では包皮が欠如しています。
④下裂がひどいケースほど、陰嚢の皮膚や皮下組織左右に二分したものになります。こうした場合や、精巣(せいそう)を触れることができないような場合は、半陰陽(はんいんよう)(「真性半陰陽」)とまぎらわしいため、性染色体検査などを行ないます。
[治療]
 亀頭部下裂はほとんど手術を行ないません。それ以外では、障害の程度により、さまざまな手術が行なわれています。基本は、手術によって、正常な排尿と将来の性生活が可能になるように矯正(きょうせい)することです。
 すなわち、①陰茎の屈曲を治す、②足りない尿道をつくる、③外尿道口・亀頭を整形・形成する、④陰嚢の変形を治すことになります。最近は、これらを1回の手術で行なうことも多く、成功率も向上しています。
 しかし、手術しても、思わぬところに尿道口ができたり、尿道口の狭窄(きょうさく)がおこったりして、再手術を必要とすることもあります。早めに泌尿器科(ひにょうきか)の小児専門医を受診して、正確な診断を得た後に、時期をみて手術を受けます。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尿道下裂」の意味・わかりやすい解説

尿道下裂
にょうどうかれつ

かなり多くみられる尿道の形態異常で、外尿道口が陰茎下面に開口しており、その位置により次の三つに大別される。(1)亀頭(きとう)部下裂 もっとも軽度なもので、ほとんど障害はない。(2)陰茎部下裂 外尿道口が冠状溝より後方で陰茎の下面に開口しており、本来尿道のある部分は索状物chordeeのためにひきつられて陰茎が下方に屈曲変形し、立位での排尿が困難であったり、性交不能のこともある。(3)陰嚢(いんのう)および会陰(えいん)部下裂 外尿道口が陰嚢あるいは会陰部に開口するため、陰嚢は二分されて陰唇のようにみえることがある。陰茎は著しく下方に屈曲しており、立位での排尿や性交は不可能である。会陰部下裂の場合は男性(仮性)半陰陽との鑑別が必要で、腟(ちつ)が存在すれば男性半陰陽である。

 治療としては、外科的に、陰茎を下方に屈曲させている索状物を除去(索切除術)し、陰茎あるいは陰嚢の皮膚を利用して尿道形成術を行う。索切除術と尿道形成術を一期的に行う方法と二期に分けて行う方法があるが、いずれにしても、遅くとも就学以前に手術を完了するようにするのが望ましい。この手術は育成医療の対象になっている。

 なお、尿道下裂とは反対に、外尿道口が陰茎の背面に開口している形態異常を尿道上裂といい、高度の場合には膀胱(ぼうこう)外反症を伴う。

[白井將文]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尿道下裂」の意味・わかりやすい解説

尿道下裂
にょうどうかれつ
urethral hypospadia

男性の尿道の先天的奇型。外尿道口が亀頭の先端に開口せずに,軽度では陰茎の腹面 (下面) ,より高度では陰嚢部,ときに会陰部に開口している。また,尿道の開口部より先の陰茎が腹側に曲っているが,包茎はなくて亀頭が露出しているのが特徴である。高度の尿道下裂では陰嚢が左右に割れ,女子の陰裂のように見えるため,出生時に女児と誤認されることもある。しばしば停留睾丸を合併し,その一部は腟があるため,半陰陽に分類される。

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世界大百科事典(旧版)内の尿道下裂の言及

【半陰陽】より

…睾丸要素の多寡によって,性器の外形は男性に近いものから女性に近いものまでさまざまである。一般には,陰茎は陰核のように小さく,尿道はその先端に開口せず女性のように陰茎の基部に開口している(尿道下裂)。陰囊の発育は悪く,一見大陰唇のようにみえる。…

※「尿道下裂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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