屈原(郭沫若の戯曲)(読み)くつげん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「屈原(郭沫若の戯曲)」の意味・わかりやすい解説

屈原(郭沫若の戯曲)
くつげん

中国の作家郭沫若(かくまつじゃく/クオモールオ)の五幕戯曲。1942年作。戦国時代、楚(そ)の高官であり『楚辞』の作者でもあった屈原を主人公とし、斉(せい)と同盟して秦(しん)にあたれとする彼の策が、反対派の王子、奸臣(かんしん)、王の寵姫(ちょうき)などの陰謀によって懐(かい)王にいれられず、かえって追放、投獄される悲劇を描く。屈原の愛国主義と彼を陥れる陰謀との対照に、抗日戦中の国民党による言論統制、共産党弾圧への批判を込めた作品。42年重慶(じゅうけい/チョンチン)で初演されて大きな反響をよんだ。日本でも53年(昭和28)前進座により初演。以後同座および同座脱退後の河原崎長十郎により数回上演されている。なお作者にはこれに先だち屈原論に「離騒」の現代語訳を付した『屈原』(1935)があり、屈原に対する早くからの関心を示している。

丸山 昇]

『須田禎一訳『屈原』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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