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農薬には種々の製剤が知られているが,水溶液剤,乳剤のような液剤や水和剤を,水に溶かすかあるいは混和して散布する製剤では,薬液が均一に病害虫や作物に付着することが必要である。また付着した薬剤が施用された対象になるべく長時間保持されることも望ましい。このような目的で農薬に添加される薬剤を展着剤という。展着剤として登録されている薬剤には次のようなものがある。(1)非イオン界面活性剤 ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類で,水中でイオンに解離しない。(2)陰イオン界面活性剤 アルキルベンゼンスルホン酸塩,リグニンスルホン酸塩,ジナフチルメタンスルホン酸塩,アルキルスルホコハク酸塩などで,水中で解離し,洗浄力,浸透力,乳化力を有する。一般に両性界面活性剤を混合して用いることが多い。(3)D-ソルビット展着剤 施設栽培における農薬のジェットエンジン式噴霧機による散布用の展着剤。(4)カゼイン石灰 カゼイン15%,消石灰85%の混合物で,ボルドー液や銅水和剤の展着剤としてよく用いられる。アルカリ性なので,アルカリに弱い農薬の展着剤としては使用できない。(5)フォーム・スプレー用起泡剤 散布液を泡状にする起泡剤で,ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテルが主成分。(6)噴霧粒子水分蒸発抑制剤 空中散布用の農薬に添加する薬剤で,噴霧粒子からの水分の蒸発を抑制する。ポリアクリル酸ナトリウムが主成分。このほか,アルキルトリメチルアンモニウム展着剤,ポリ酢酸ビニル展着剤などが使用されている。
執筆者:高橋 信孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
湿展固着(付着)剤の略語。水で薄めて噴霧器で散布する農薬に補助剤として微量を添加する薬剤で、それ自体には薬効はない。薬液の表面張力を下げて作物の表面や病害虫に薬液が均一に広がることを目的として使用される。作物上の薬剤が雨露などで流亡するのを押さえ保持する能力を兼備したものもある。現在市販されている展着剤のほとんどは湿展性に優れているが、固着能力はない。乳剤の農薬には添加する必要はない。
[村田道雄]
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