国際私法上の一つの主義で,法の適用・効力を,制定された領域内だけで認めようとするもの。属人法主義に対する。封建時代においては権利・義務の問題が人でなく土地を中心に考えられており,一定の領域内の法律関係にはもっぱらその領域の法だけが適用されていた。現代においても〈特定国家の領域内では原則としてその国家の領域法が妥当する〉,という意味ではこのような考え方が残存している。しかし厳格な属地法主義は,各領域間の交流の増大とともに克服され,現在では法の属地性の概念の多義性に応じて,主として次の二つの意味で問題とされる。
(1)属人法に対する意味での属地法として用いられる場合である。中世以来の法規分類学派は,法を人法と物法に区分し,後者についてはこの意味での属地性を認めていたのである。その考え方は,16世紀フランスのダルジャントレBertrandd'Argentréや17世紀オランダのフーバーUlricus Huberなどを経て,英米の国際私法に大きな影響を与えてきた。現在の日本の国際私法においても,たとえば物権や法律行為の方式という法律関係について,物の所在地や行為地という属地的(場所的)要素を媒介としてそれに適用すべき法律(準拠法)を定めている。法廷地の法律の適用を広く認めようとする場合も,この考え方に含まれるであろう。
(2)一般的に法の普遍性に対して法の属地性を問題とする場合には,法が場所的に制約された効力しか持ちえないことを意味する。たとえば高度に政治的目的を有する法律(補償をまったく伴わない収用を定める法律など)は国外ではその存在自体がまったく無視される(絶対的属地性)。しかし属地的な法律が一定の直接的でない効果を国外においても認められる場合がある。たとえば一般に第2の属地性の認められる公法についても,それが私法的法律関係へいわゆる〈反射効〉の形で影響を与え国外でその効力が認められる場合や,その効力の絶対的属地性に基づいて生ずる効果のうち,間接的効力が外国においても承認されることがある。私法は原則として第2の属地性をもたない。属地主義という言葉で国際法や刑法,破産法において論じられる問題も,以上のいずれかの意味における属地性とかかわっているといってよい。
→国際私法
執筆者:桜田 嘉章
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属地主義ともいう。法の適用範囲や効力範囲を,その法が制定された領域内においてのみ認める考え方。属人法主義に対する。封建時代には,領主が制定した法の絶対的な属地性が認められていたが,徐々に緩和され,人の身分や能力について属人法にもとづくことが多くなった。現在においても,私法の関係で,不法行為,物権などは属地法にもとづく場合が多い。公法との関係では,その性質上,属地的に適用されるのが原則である。刑法がその代表的例である。
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…刑法とは,犯罪と刑罰に関する法であり,どのような行為が犯罪となり,その犯罪にどのような刑罰が科せられるかを規定した法である。それは,まず,六法全書に〈刑法〉(1907年法律第45号)という名称で収録されている法律,すなわち刑法典である。そこには,殺人罪,窃盗罪などの典型的な犯罪とそれに対する刑罰がほぼ網羅的に規定されている。これを〈狭義の刑法〉または〈形式的意味の刑法〉という。しかし,犯罪と刑罰に関する法は,刑法典に限られない。…
※「属地法主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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