改訂新版 世界大百科事典 「山はね」の意味・わかりやすい解説
山はね (やまはね)
rock burst
地下深部の坑道や採掘切羽で,周辺の岩盤が急激に破壊して,破片が飛散する現象。岩はねともいい,炭層で起これば炭はねと呼ばれることもある。炭鉱で,大量のメタンガスの放出を伴うときは,ガス突出となる。一般に,地下の空洞周辺の岩盤は時間をかけて徐々に破壊していく。しかし,地下深部において,比較的強固で弾性的な挙動をする岩盤が大きな応力を受けて弾性的に変形しているとき,発破や採掘の進行などが引金となって力の平衡が乱されると,広範囲の岩盤が同時に急激に破壊し,大量の弾性エネルギー(ひずみエネルギー)が放出されると考えられている。したがって,断層や褶曲,採掘跡空洞の存在などによって局部的に岩盤応力が大きくなっていて,しかも弾性的な岩盤が存在する場所で起こりやすい。
飛散した岩石に当たったり,その下敷きになって死傷する危険が大きいので,地下深部を稼行する鉱山やトンネルでは,その予知・予防が重要な問題となる。予防には,(1)なるべく規則的に採掘して,掘り残した部分が島状あるいは半島状にならないようにするなどして,岩盤応力が異常に大きい場所を作らないこと,(2)異常な応力が発生している所の岩盤をボーリングや小規模な発破によりゆるめること,などが有効である。また,その予兆とみられる山鳴りを観測して,その発生頻度が大きくなったら,山はねの危険も大きくなったと判定する方法などが提案されている。
執筆者:西松 裕一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報