戦国時代の武将。伊作(いざく)島津家の嫡子として田布施(たぶせ)(鹿児島県南さつま市金峰(きんぽう)町地区)に生まれる。父は忠良(ただよし)、母は島津成久(しげひさ)の女(むすめ)。幼名虎寿丸(とらじゅまる)。通称又三郎。官は左衛門尉(さえもんのじょう)、修理大夫(しゅりのだいぶ)、陸奥守(むつのかみ)、位は従(じゅ)五位下、入道伯囿斎(はくゆうさい)。1526年(大永6)守護(しゅご)島津勝久(かつひさ)の要請で養子となり伊作(同日置(ひおき)市吹上町地区)から鹿児島に入り、三州(薩摩(さつま)、大隅(おおすみ)、日向(ひゅうが))守護職(しゅごしき)を継ぐが、同族島津実久(さねひさ)の攻撃を受け田布施に帰り、以後数年父とともに実久の党と戦い、1545年(天文14)ごろ名実ともにその地位が確立する。これより先、1543年ポルトガル船が種子島(たねがしま)に鉄砲をもたらすやこれに深い関心を示し、1549年フランシスコ・ザビエルがキリスト教布教のため鹿児島に上陸すると、これを伊集院(いじゅういん)城(霧島市の清水城説もある)に迎えて便宜を与え、商船の来着を期待した。1550年伊集院より鹿児島に移り、居を内城(うちじょう)に定めた。爾後(じご)貴久は政治力と武力を用いて菱刈(ひしかり)氏などを服し、着々と三州統一の事業を進めた。1570年(元亀1)義久(よしひさ)に家督を譲り翌年没した。子の義久、義弘(よしひろ)、歳久(としひさ)は文武に優れており、よく父を助け、父の遺業を成就した。法名大中良等庵主南林寺殿。鹿児島市の松原神社は南林寺の旧地にあり、貴久を祀(まつ)る。
[五味克夫]
(福島金治)
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1514.5.5~71.6.23
戦国期の薩摩国の武将。幼名虎寿丸。又三郎。三郎左衛門尉・修理大夫・陸奥守。法名伯囿(はくゆう)。島津氏庶流相州家忠良の嫡子。本宗家島津勝久の養子となり,1527年(大永7)4月,守護職を継承。しかし島津実久・勝久をはじめこれを承認しない勢力の圧力で守護職を奪われる。その後の抗争をへて,35年(天文4)に勝久を追放。39年の紫原合戦で実久を破り,天文末年頃には薩隅日3カ国の諸領主から,その地位を認められた。
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…旧国名。隅州。現在の鹿児島県の一部。鹿児島湾奥の海岸部と内陸部,大隅半島部,半島西南海上の種子島・屋久島等の島嶼部の三つからなる。
【古代】
西海道に属する中国(《延喜式》)。はじめ日向国の一部をなし,襲国(そのくに)ともよばれ,熊襲(くまそ)・隼人(はやと)の根拠地とみなされていた。割拠の豪族として大隅直(あたい)や曾君(そのきみ),加士伎県主(かしきあがたぬし),肝衝(きもつき)などの名があり,大隅隼人の首領大隅直の地盤と目される半島東南部肝属(きもつき)川一帯に高塚式古墳が少なくない。…
…旧国名。薩州。鹿児島県西半部。
【古代】
西海道に属する中国(《延喜式》)。大隅国と同じく日向国より分出し,合わせて南九州の三国,奥三州などと呼ばれた。《日本書紀》白雉4年(653)7月条に〈薩麻之曲竹島之間〉とみえ,《続日本紀》大宝2年(702)8月条に薩摩・多褹(たね)を征討し,戸を校(かんが)え吏を置く,10月条に唱更(はやひと)国司の言上で国内の要害に柵を建て兵を置くとあり,その説明に唱更国とは今の薩摩国府なりとあることから,このころ薩摩国は日向国より分出設置されたと思われる。…
…鎌倉時代から江戸時代まで南九州を領有した有力な大名。惟宗姓。のち藤原姓から源姓を名のるに至る。系図では初代忠久を源頼朝庶子,惟宗広言養子とするが,近衛家家司惟宗氏の出で京都から鎌倉に移り頼朝より厚遇をうけたものであろう。1185年(文治1)島津荘下司となり,翌年地頭に補任され,97年(建久8)には薩摩・大隅両国の家人奉行人(守護)に任命された。日向国についても同様であったらしい。1203年(建仁3)比企氏の乱で三国の守護・地頭職を失ったが,薩摩分のみはまもなく回復した。…
※「島津貴久」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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