武具に装着した飾金具の一種で,弥生時代から古墳時代にわたって遺品がある。中空で裏面に留棒を鋳出した円錐体の周囲に,数個の扁平な脚状装飾の突出した形で,4脚に作ったものは卍(まんじ)形を呈するところから,卍形銅器の意味で巴形銅器と呼ぶ。大型のものは径12cmあるが,5~6cmをふつうとする。裏面に留棒を鋳出した円形の飾金具は中国北部の青銅器文化に多いが,巴形の脚をもつものは日本以外にはない。弥生時代の巴形銅器は7脚あるいは6脚で,脚は左旋し,中心部は截頭円錐形か半球形である。中期の甕棺から出土した例がある。古墳時代の巴形銅器は4脚右旋をふつうとするが,まれに5脚左旋のものもある。4世紀後半から5世紀前半の古墳の副葬品として出土し,多くは革盾の飾金具に用いているが,革靫(かわゆき)の飾金具にもした。巴形銅器の形を模作した碧玉製品があって,とくに巴形石製品と呼ぶが,実例は少ない。
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
弥生(やよい)時代から古墳時代にみられる青銅製飾り金具。中空の半球形、円錐(えんすい)台形の座に扁平な曲状支脚が派生している。古墳時代には4脚式が普通であるところから卍(まんじ)字形銅器とも称される。弥生時代には7、6、5脚式があり、左捩(ひだりよじ)りを原則としている。分布は、西は対馬(つしま)、九州から東は神奈川県に及んでいる。古くは弥生時代後期の甕棺(かめかん)より、新しくは5世紀前半の古墳よりそれぞれ発見されている。弥生時代の出土例は、墳墓の副葬品、単独一括埋蔵品、貝塚・集落などからの発見例などがあり、1遺跡から1~3個発見の場合が多いが、8個一括埋蔵の場合もある。古墳からは革盾(かわたて)に着装された発見例がある。スイジガイ(水字貝)の形態に起源する呪具(じゅぐ)説が有力である。
[小田富士雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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