能の曲名。四番目物。作者不明。シテは巫女(みこ)。勅命で1000疋の巻絹が熊野権現に納められることになり,国々から運ばれたものを受け取るために,廷臣(ワキ)が熊野に派遣される。京都からの上納品を携えた男(ツレ)は,熊野に着いてまず音無天神(おとなしのてんじん)に参詣するが,咲き匂う冬梅に目をとめ,一首の和歌を心の中で天神に手向ける。さて巻絹を納めに行くと,期日を過ぎていたので,廷臣の従者(アイ)に縛られてしまう。そこへ巫女(シテ)が現れる。巫女には音無天神が乗り移っていて,昨日の和歌の手向けを喜び,男の縄を解いてくれる。巫女はなお和歌の徳を述べ(〈クセ〉),神前に祝詞(のりと)を捧げ(〈ノット〉),神楽(かぐら)を奏する(〈神楽〉)。そのうちに再び神がかりしたようすで物狂いのていとなるが,時がたつと神霊は離れ去り,平常の女に戻るのだった。
憑物(つきもの)の能は世阿弥以降しだいに疎外されたようで,この能は貴重な作といえる。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
能の曲目。四番目物。五流現行曲。熊野(くまの)へ巻絹を奉納する男(ツレ)が、途中の音無(おとなし)天神に参詣(さんけい)して遅くなったため、監督の勅使(ワキ)に縛られてしまう。天神ののりうつった巫女(みこ)(シテ)が登場し、縄を解くように命ずる。神託を疑う勅使に、巫女は、男が天神に捧(ささ)げた和歌を語って、和歌の徳を説き、激しい神がかりの状態のなかで熊野権現(ごんげん)の神威を示す。祝詞(のっと)をあげ、神楽(かぐら)を舞う、中世の時代相を舞台に映した能。
[増田正造]
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…いずれも耐寒性が強い。代表種の巻絹(まきぎぬ)S.arachnoideum L.は白い綿毛でおおわれて美しい。一方,アエオニウム属はカナリア諸島などに36種が知られ,いずれも耐寒性はなく,有茎種もある。…
…現在の小麦粉系のものでは,瓦せんべいや亀の子せんべいなどは形状によって名づけられたものであり,玉子せんべい,小豆せんべい,みそせんべいなどは副材料による名であり,その中には鉱泉水を使ったカルルスせんべい(鉱泉せんべい)のようなものもある。薄焼きにしたものをそのまま,あるいは有平糖などを芯にして巻きこんだのが巻きせんべい,あるいは巻絹(まきぎぬ)と呼ばれるもので,これは宝永(1704‐11)ごろから江戸吉原の名菓として有名であった。米粉系のせんべいは,埼玉県草加(そうか)市の名物である草加せんべいに代表されるもので,関東では〈塩せんべい〉と呼ぶ。…
※「巻絹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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