すべて 

帳外(読み)チョウガイ

デジタル大辞泉 「帳外」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐がい〔チヤウグワイ〕【帳外】

ばりの外。幕の外。
帳面に記入してないこと。
相宿の木まくらに結ぶ縁は出雲の―」〈滑・膝栗毛・六〉
帳外ちょうはず

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「帳外」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐がいチャウグヮイ【帳外】

  1. 〘 名詞 〙
  2. とばりの外。幕の外。
    1. [初出の実例]「帳外無人簾未下、金殿沈沈玉漏遅」(出典:南郭先生文集‐三編(1745)一・小督詞)
    2. [その他の文献]〔温庭筠‐勅勒歌〕
  3. 帳面に記入されていないこと。帳簿の記入以外。
    1. [初出の実例]「相宿の木まくらに結ぶ縁は出雲の帳外(チャウグイ)、二方くうじんのとなり同士は、長屋附合の外にして」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)六)
  4. 特に、江戸時代、人別帳からはずすこと。また、その者。追放刑に処せられた者、無宿と呼ばれた者などがこれに当たり、久離(きゅうり)勘当(かんどう)されただけでは帳外とはならず、改めて村方から領主に帳外を願い出なければならなかった。除帳。帳はずれ。〔地方凡例録(1794)〕
  5. 江戸時代、奉行所の留帳に記載漏れとなり、差日(定められた裁判日)に裁判の行なわれない訴訟のこと。その場合は別に書留められ、余裕のある場合などに処理された。
    1. [初出の実例]「其外済口承届、或用悪水堤川除出入熟談申渡、且地改可遣旨申渡、帰村申付候類も帳外え差出候」(出典:徳川禁令考‐後集・第一・巻二・天明八年(1788)一二月)

ちょう‐はずれチャウはづれ【帳外】

  1. 〘 名詞 〙ちょうがい(帳外)
    1. [初出の実例]「花ぬすむ科やえんまの帳はつれ〈正甫〉」(出典:俳諧・懐子(1660)九上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「帳外」の意味・わかりやすい解説

帳外 (ちょうはずれ)

〈ちょうがい〉ともいう。江戸中期以降,行跡悪く親や兄弟親類などに難題がかかるのをさけるため,〈宗門人別帳〉からはずして,村を追放された者などをいう。無宿ともいう。当時は刑罰連座制であるため,不法行為を行うおそれのある子をもった親は,その子を勘当し,さらに人別帳からの抹消を願い出て公認されると,その子は帳外となる。18世紀末の天明期(1781-89)ごろから勘当が同時に帳外となるようになり,19世紀初頭の文化期(1804-18)ごろからは勘当されていない要注意者を村役人が帳外扱いをして,人別帳に札をつけておくところから,〈札つき〉の称がおこったという。

 なお,江戸初期には検地帳に登録されない農民を〈帳外〉と称した。地域によりさまざまの呼び方があるが,いずれも名請人でない隷属身分の者のことである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「帳外」の意味・わかりやすい解説

帳外(ちょうがい)
ちょうがい

「ちょうはずれ」とも読む。江戸時代、行く末見届けがたい者から被るべき後難を免れるために、村方でその者を人別(にんべつ)帳から除くこと。その目的において久離(きゅうり)と一致するが、久離は親族関係断絶するために目上の親類が行うのに対し、帳外は村方で行ったものである。両者は別であるから、親類から久離を願い出ても、村方から帳外を願い出ないこともあった。帳外は、村方で、その者の親族と相談のうえ、領主・地頭(じとう)あるいは代官に願い出て、その許可を得て行われる。帳外された者を無宿という。無宿に対して、人別帳に記載されている者を有宿という。帳外の取消しには、領主・地頭・代官の許可を要した。なお、江戸初期には、検地帳に記載されない農民のことを広く帳外と称した。

[石井良助]


帳外(ちょうはずれ)
ちょうはずれ

帳外

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帳外」の意味・わかりやすい解説

帳外
ちょうはずれ

「ちょうがい」ともいう。江戸時代,検地帳,宗門人別帳 (→宗門改帳 ) の台帳に記入されないこと,また記入されない者をいう。 (1) 百姓として検地帳に記入されない隷属的性格の濃い農民と,(2) 親族関係の断絶の行為によって,あるいは貧窮のため欠落することによって,宗門人別帳からその名が削除され,記入されない者とがあった。後者の場合帳外された者は無宿人となった。 (→無宿 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「帳外」の解説

帳外
ちょうはずれ

江戸時代,検地帳に記載されなかった貧農
「ちょうがい」とも読む。親類縁者に難がかかるのを防ぐため,あるいは勘当や久離により宗門改帳から削除され,村を追放された無宿者もさす。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

普及版 字通 「帳外」の読み・字形・画数・意味

【帳外】ちようがい

帳の外。

字通「帳」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の帳外の言及

【帳外】より

…無宿ともいう。当時は刑罰が連座制であるため,不法行為を行うおそれのある子をもった親は,その子を勘当し,さらに人別帳からの抹消を願い出て公認されると,その子は帳外となる。18世紀末の天明期(1781‐89)ごろから勘当が同時に帳外となるようになり,19世紀初頭の文化期(1804‐18)ごろからは勘当されていない要注意者を村役人が帳外扱いをして,人別帳に札をつけておくところから,〈札つき〉の称がおこったという。…

【無宿】より

…江戸時代,百姓・町人などで人別帳から除かれ(帳外(ちようはずれ)という),居所を定めず放浪し,無頼を働く者を無宿といい,やくざ仲間や犯罪人などは生国を冠して,上州無宿何某などと呼んだ。その原因は多様であるが,貧窮による欠落(かけおち)や家出のほか,親から久離勘当されたり,博打(ばくち),窃盗,刃傷(にんじよう),失火などの罪によって軽追放,所払(ところばらい)などの刑に処せられた場合などがある。…

※「帳外」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

すべて 

今日のキーワード

グリーンランド

北大西洋にある世界最大の島。デンマーク自治領。中心地はヌーク(旧ゴートホープ)。面積217万5600平方キロメートルで、全島の大部分は厚い氷に覆われている。タラ・ニシンなどの漁業が行われる。グリーンラ...

グリーンランドの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android