その年のよしあし,作柄や漁の豊凶,年間の毎月の天候を占うこと。一般の家庭の行事と,神社の特殊神事などになっているものとがある。時期は正月,小正月前後,節分の夜,端午の節供,七夕の夜,八月十五夜などで,とくに小正月のころに集中している。方法には集団での競争の結果で占うものと,さまざまな物に現れるしるしによる占いとがある。競争の形式は綱引き,歩射(ぶしや),石打ち,火の打替え,相撲,棒倒し,押合い,柱松,競馬,競漕,悪態つき,けんかなどがあり,勝敗の結果により豊作,豊漁,豊凶などを判断する。福岡筥崎(はこざき)宮の玉せせり,岡山西大寺の会陽(えよう),山形羽黒山の松例祭など,祭事として残っている。しるしで見る形式には粥占(かゆうら),豆占,炭占などがある。粥占は小正月の夜に粥を炊いて神供とし,これに竹管やわらしべを差し入れて,それに付着する粥の量や形状によって豊凶を判断するもので,神社に筒粥神事などとして伝わっている。豆占は豆焼ともいい,節分の夜などに豆を12粒(閏年は13粒)いろりの灰の上に並べて,白く灰になるのは晴,黒く焦げるのは雨,息を吹くのは風,早く焼けるのは旱というように焼け焦げにより,各月の天候状況を知るのである。東北地方ではこの行事を家庭で行い,〈世中見(よなかみ)〉などと称するが,〈ヨナカ〉とは作柄のことである。炭占は置炭ともいい,燠火による占いで,信州では松足と称して飾松を焼いて行った。この他の方法としては,餅を小正月の夜に角膳の白米の上に載せて1晩置き,米の付きぐあいで早・中・晩稲の豊凶を判断する〈年見〉や,〈水斗(みずばかり)〉と称して正月14日の月影が曲物に差し込むのに応じて水を入れ,それを目盛に合わせて量を知り,これにもとづいて灌漑の用意をしたり,若水の桶に穀粒を落として沈みぐあいにより作柄を見る〈水試(みずだめ)し〉という方法もあった。いずれも,年の初めや季節の変り目にあたって,自然の中に潜む神意を感じとり,それに従って行動しようとする意図がある。
執筆者:鈴木 正崇
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1年間の吉凶を占うこと。農耕生活を営む場合には、トシといえば穀物の実りを意味し、「トシがいい」といえば稲のできがよいというように作柄を占うものとして使われていた。年占という行事も、穀物の豊凶と、それに重大な関係をもつ天候を占うことがおもな目的であった。時期は年の初め、とくに正月15日の小(こ)正月に行われることが多く、そのほかにも盆、8月15日の月見、村の祭り、初午(はつうま)なども年占の機会である。
方法は地方によって多種多様ともいえるが、比較的よく知られ、また広い地域で行われているものをあげる。東北地方で、トシミ、ヨナカミ、サクダメシなどとよばれる方法は、米を敷きならした上に餅(もち)を並べて一晩置き、翌日餅に米がついたぐあいで、その年播(ま)き付けるイネの種類を決める。また特定のものを炉の火で焼いて焼けぐあいで占う方法がある。左義長(さぎちょう)の火なども同様である。岩手県下閉伊(しもへい)地方でタクラベというのは、12個の餅の焼け方で月々の天気を占い、月ヤキ、月ダメシは節分の夜の豆を前述の餅のかわりに用いて占った。特定の神社の神事として現在も各地に行われているのが、筒粥(つつがゆ)・管(くだ)粥の神事と称する粥占(かゆうら)で、粥ダメシの名もある。小正月の粥の中にヨシなどの中が空になっている植物の茎を入れるが、あらかじめ1本ずつ作物の名を決めておき、粥から取り出して割ったときに粥が多く詰まっている作物が豊作であるとした。このほかにも、現在では競技や遊戯となっている綱引き、相撲(すもう)、舟競争、凧揚(たこあ)げなどの勝負によって、その年の吉凶を占うことが多かった。
[丸山久子]
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