合成樹脂(プラスチック)の引張強さ,弾性率はそれぞれ2~4kgf/mm,200~300kgf/mmであって,強度保持材料,構造材料として考えると,鉄やアルミニウムの引張強さ10~50kgf/mm,弾性率7000~21000kgf/mmに対してかなり小さい。そこで鉄やアルミニウムにかわりうる合成樹脂として生み出されたのが,強化プラスチックと呼ばれる,繊維状の強化材で補強された合成樹脂である。樹脂と強化材の2成分からなる代表的な複合材料で,繊維で強化されることから,FRP(fiber(glass) reinforced plasticの略)あるいは繊維強化プラスチックともいわれる。
強化材として用いられる繊維の代表例はガラス繊維である。ガラス繊維には短繊維と長繊維があるが,前者は,マット状にしたり,直接高分子と混合して用いられる。後者は,布,織物状にしたり,あるいはフィラメントワインディングといわれる方法で樹脂と複合させて用いられる。複合される強化材の量は30~60%である。強化される樹脂としては,フェノール樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂がほとんどである。とくに不飽和ポリエステル樹脂が多く,単に強化プラスチックといえば,ガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂をさすこともある。ガラス繊維のマット,織物に未硬化状態の液状樹脂を含浸させるか,ガラス繊維フィラメントに樹脂を付着させ,要求される型にあわせて,熱,圧力をかけて樹脂を硬化させる。強化材の量,強化の方法によって異なるが,強化プラスチックとすることによって,強度は10~40kgf/mm,弾性率は1000~4000kgf/mmに上がり,構造材,強度保持材としての使用が可能になる。プラスチックのさびにくさ,軽さを生かして,船,ボート,貯水槽,建築材料,自動車などに用いられている。また,プラスチックの絶縁性を生かして,回路基板,スイッチボックスなど電気絶縁材料としての用途も多い。近年,より軽く,より強い材料が航空・宇宙・軍事用途をはじめ,スポーツ用品分野にも要求されるようになり,鉄,アルミニウムを超える強化プラスチックが開発されてきた。すなわち,強くて弾性率の高い炭素繊維,全芳香族有機繊維(アラミド繊維など)などで強化されたプラスチックであり,先進複合材料advanced composite material(略称ACM)と呼ばれる。なお,熱硬化性樹脂のほか,ポリプロピレン,ABS樹脂,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂にも,剛性向上,寸法安定性向上,熱変形温度向上のために5~50%のガラス繊維が補強される場合がある。FRTP(fiber reinforced thermoplasticの略)とも呼ばれ,近年電気部品,自動車部品によく用いられるようになってきた。代表的な強化用繊維,強化プラスチックの特性をそれぞれ表1,表2に示す。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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強度を高めるため,熱硬化性樹脂を種々の充填剤と混合成形,もしくは積層することにより得られる機械的性質にすぐれた材料をいう.とくに不飽和ポリエステルと繊維とを組み合わせたものをFRP(Fiber Reinforced Plastics)という.繊維として,ガラス繊維を使用した材料をガラス繊維強化プラスチックといい,炭素繊維を組み合わせたものを炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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