能の曲名。三番目物。観世信光作。シテは老木(おいき)の柳の精。時宗(じしゆう)の遊行上人(ワキ)が陸奥の白河の関を越え,広い道を選んで歩みを進めると,一人の老人(前ジテ)が呼びかけて現れる。老人は,前(さき)の遊行上人が川岸の旧道を通ったことを知らせ,その道を案内して,〈朽木(くちき)の柳〉という名木のある古塚を見せる。これははるかに昔からの名木で,西行が歌に詠んだこともあるのだと説明した老人は,上人から念仏を授かって古塚の陰に消える。夜になると,老体の柳の精(後ジテ)が烏帽子狩衣(えぼしかりぎぬ)の姿で現れ,柳にまつわる説話の数々を聞かせ(〈クセ〉),報謝の舞を舞う(〈序ノ舞・ノリ地〉)。クセと序ノ舞が中心の曲。にぎやかな能が得意なこの作者には珍しく,閑寂な趣の能である。世阿弥の《西行桜》に対抗した作ともいえるが,そのクセが桜の名所を描いてまとまっているのに比し,この能のクセは,柳にまつわる故事を関連なくつないだ形で,作風は争えない。箏曲《新青柳》《青柳》の原拠である。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
能の曲目。四番目物、また鬘(かずら)物に準じて三番目物としても扱われる。五流現行曲、ただし金春(こんぱる)流は明治の復曲。世阿弥(ぜあみ)の名作『西行桜(さいぎょうざくら)』に対抗して晩年の観世信光(かんぜのぶみつ)が書いた作品。初演は1514年(永正11)。西行の「道のべに清水流るる柳蔭(かげ)しばしとてこそたちどまりつれ」の和歌を骨子に、歌に詠まれた老いた柳の精が、閑寂な風情をみせる高度な能である。奥州に至った遊行上人(しょうにん)(ワキ)の前に、老人(前シテ)が現れて、先代の遊行上人の通った古道に案内し、西行の歌に名高い朽木(くちき)の柳という名木を教え、上人から十念を授かると柳のあたりに姿を消す(中入)。里人(間(あい)狂言)が出て、上人に柳の物語をして退く。上人の念仏のなかに、柳の精(後シテ)が白髪の老翁の姿で現れ、和漢の柳の故事を物語り、報謝の舞を舞って消える。
[増田正造]
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新