角隠し(読み)ツノカクシ

デジタル大辞泉 「角隠し」の意味・読み・例文・類語

つの‐かくし【角隠し】

婚礼の際、和装花嫁が用いるかぶり物。文金高島田の上に留める細長い布で、表は白絹、裏は紅絹揚げ帽子から変化したものという。
一向宗婦人報恩講参詣にかぶった黒い帽子。一向帽子。角帽子
[類語](1綿帽子頭巾御高祖おこそ頭巾防空頭巾フードベール

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改訂新版 世界大百科事典 「角隠し」の意味・わかりやすい解説

角隠し (つのかくし)

被り物一種で,揚帽子(あげぼうし)とも呼ばれる。表は生絹(きぎぬ),裏地は紅絹(もみ)でつくられ,現在でも花嫁の文金高島田に用いられている。中世の女性は小袖の一種である被衣(かずき)を用いたが,近世に入ると綿帽子(わたぼうし)にかわり,婚礼の正装に用いられた。婚礼の儀式はやがて近親者たちに披露をする習慣が強くなり,綿帽子のように深く被るものは花嫁の顔がよく見えないために,今日見られるような形にかわった。幅約15~17cm,長さ約110cmほどのものを中央部を前髪にかけ,左右均衡に二つ折りにして後方に回し,髷(まげ)の後ろ上で留めて被る。角隠しの名の由来は,女性の嫉妬心を戒め,醜い心を隠すためといわれているが,封建社会を背景とする女子への訓示としての性格を含んだ俗説である。近世の中ごろよりむしろ実用としての性格が強くなり,浮世絵美人画にも見られるように,道中歩きに華やかな女髷のちり除けとして盛んに用いられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「角隠し」の意味・わかりやすい解説

角隠し
つのかくし

女性の被(かぶ)り物の一種。現在では花嫁が婚礼の際に用いているが、元来は江戸時代の富裕家庭の女性の被り物で、手拭(てぬぐい)と同じく外出の際のちりよけ用として使ったもので、室内では取り去るのを例とした。正しくは練絹(ねりぎぬ)でつくられたので練(ねり)帽子とも揚(あげ)帽子ともいい、前髪の部分と、後ろの髱(たぼ)の部分を銀製定紋付きの帽子針で留めた。古来の角隠しは角(つの)帽子といって、報恩講のおりに老婆がかぶる黒の帽子で、女性が角を出すことを戒めるものであった。これが、嫁しても角を出さないようにとの戒めを込めて、揚帽子をも角隠しというようになるのは明治に入ってからである。なお、形態はまったく違うものだが、静岡県掛川付近では古来の角帽子の形のものが葬儀に際して用いられている。

[遠藤 武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「角隠し」の意味・わかりやすい解説

角隠し
つのかくし

(1) 江戸時代に女性が寺参りをする際にかぶったかぶりもの。特に浄土真宗門徒の女性が報恩講参詣に際してかぶった折り紙の舟形に似た黒絹のかぶりものが原型とされている。 (2) 婚礼の際の花嫁のかぶりもの。江戸時代の御殿女中や上流婦人が外出の際に用いた揚げ帽子を明治以後に継承したもので,幅約 15cm,長さ約 110cmの,表は白絹,裏は紅絹のものを前髪にかぶせてうしろで2つ折りにし,文金高島田の髷 (まげ) のうしろ上で留めておく。角隠しの語は,俗に女性に嫉妬をいましめるかぶりものとみなしたことに基づくとされている。

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百科事典マイペディア 「角隠し」の意味・わかりやすい解説

角隠し【つのかくし】

かぶり物の一種。揚帽子(あげぼうし)とも。江戸時代には実用的なちりよけであり真宗門徒の女性が寺参りに用いたが,現在では花嫁の頭飾に用いられる。幅約15cm,長さ約110cmの白絹(裏は紅絹(もみ))を前髪にかぶせ,左右を二つ折りにして髷(まげ)の後ろ上で留める。女性の感情過多を戒めたものとするのは俗説で,古くからの頭部や面部を包む習俗が儀礼化したもの。

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世界大百科事典(旧版)内の角隠しの言及

【被り物】より

…揚帽子は表は白,裏は紅絹の袷仕立てで,俗に白鷺と呼ばれた。芝居や野遊びの塵よけとしてかぶられたのが,近代になって角隠しと呼ばれるようになり,婚礼用として今に残っている。角帽子は揚帽子の白鷺に対して烏と呼ばれた和船形の帽子である。…

【晴着】より

…葬式に〈かつぎ〉や,綿帽子や,きれでつくった〈おかざき〉(北陸地方)や,〈ふなぞこ〉(四国)または一片の白布をかぶり,白紙を三角に折ったものを額にあてることなどがそれである。婚礼にもかぶり物が重要視され,花嫁の角隠しは最も新しく,現代も用いられているが,それ以前に綿帽子や〈おかざき〉〈ふなぞこ〉〈かつぎ〉などがあって,かぶり方をやや変えるだけで,吉事にも凶事にも共用する。田植の手拭,宮まいり児の鉢巻,祭りのみこしかきの鉢巻,踊子の鉢巻も晴着のかぶり物で,参拝にも客前に出るにも,かぶり物をかぶるのが作法であった。…

※「角隠し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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