市町(読み)いちまち

精選版 日本国語大辞典 「市町」の意味・読み・例文・類語

いち‐まち【市町】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 奈良平安時代における市人(いちびと)居住地域。市司(いちのつかさ)の監督下に置かれた。市籍を持たない商人も住んで地子(じし)を負担した。
    1. [初出の実例]「凡居住市町之輩、除市籍人地子」(出典延喜式(927)四二)
  3. 店舗を構えて商品を販売する場所。
    1. [初出の実例]「市町に売る物も販婦(ひさきめ)の売る物も」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
  4. 町なか。市街地世間
    1. [初出の実例]「歌ざまの事、如市町説ば、詠歌の体、其意自由にして」(出典:落書露顕(1413頃))

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日本歴史地名大系 「市町」の解説

市町
いちまち

[現在地名]小諸市小諸 へい 市町・しん

小諸城大手門の西北、北国脇往還沿いにある。小諸三町のうちでは最も西側に位置し、中沢なかざわ川の傾斜地である。

中世まで手城塚てしろづか村や近辺の村の市場であったが、北国脇往還の整備に伴い、慶長末期までには集落を形成したと伝える(旧版北佐久郡志)。元和八年(一六二二)一二月の佐久郡高書上帳(柳沢ミイ氏蔵)に「六百拾六石 市町」とあり、延享年代(一七四四―四八)に書かれた「小諸砂石鈔」には「家数百九拾六軒、人数千三拾人、町長サ廿六町五拾二間、市町・横町・柳町・清水町」とある。


市町
いちまち

[現在地名]平野区平野ひらの〈市町三丁目・うえ町二丁目・みや町二丁目〉など

平野郷ひらのごう町を構成した七町四散郷の一町。街衢北東にあり、野堂のどう町の北に位置する。南東部市ノ口で河内方面への道に通じた。寛政九年(一七九七)の高は一七五石余、古軒役は五五軒(「雑記」土橋家文書)。宝永三年(一七〇六)の竈数二五八・人数一千二九、享保一七年(一七三二)の竈数三六八・家数二〇八・人数一千二一三、天保七年(一八三六)には竈数二一九・人数九七四(各年「覚帳」杭全神社蔵、ただし、寺社・坂上家関係のぞく)

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改訂新版 世界大百科事典 「市町」の意味・わかりやすい解説

市町 (いちまち)

日本古代の都城制で設定された,生産物販売のための特殊な地域。平安京には東,西の市町があって,市司いちのつかさ)の管理下に,東市に51鄽(くら),西市に33鄽が設定されている。鄽とは商品の種類を指すが,〈市町ニ売ル物モ販女(ひさぎめ)ノ売ル物モ極テ穢キ也〉(《今昔物語集》)とあるように,行商にたいして市町には固定した店舗があることを示し,鄽も政府から指定された商品を売買する店舗の意味に転化すると解してよい。市町の商人は市人,市女(いちめ)といわれ,地子(じし)を免除されて市町で生活しているが,ほかに市籍をもたない商人も地子を納入して市町への居住を認められた。《和名類聚抄》は店を〈坐して売る舎,俗にいう町これなり〉とし,《伊呂波字類抄》に店家をマチヤとしているのは,市町の店舗から生まれた語句であろう。室町時代に伊勢山越えの近江商人が,市町での抜刀を禁止する掟を作成している。また近江国得珍保(とくちんのほ)呉服座商人が在々所々市町商売を守護から保証されているのも,市町の商業が店舗商売であることを示している。江戸時代に市町の語は在郷,田舎にたいする市街地の意味に転化する。

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世界大百科事典(旧版)内の市町の言及

【市】より

…これらの市は,商品経済の発展にしたがってしだいに淘汰され,大きな市に統合されていった。そして市町といわれる町場と市との併存形態の中心集落が形成された。この中心集落は在地武士の城館と結合する場合が多く,尾張国では,16世紀,19の中心集落が,城下市町として,ほぼ4~6kmの間隔で分布して形成されていた。…

【城下町】より

…守護町から戦国城下町に発展したものは鹿児島,人吉,山口,石寺,駿河府中,甲斐府中などで,多くない。一方,室町期に国人領主らの営む城館集落には,近隣に市町(いちまち)をもつものがみられるようになり,彼らの戦国大名化とその領国支配の進展にともなって,戦国大名は城郭の整備とともに近隣の市町を吸収し,ここに城下町が出現することとなった。ただ戦国城下町で計画性をもち整備されたのは市町のみで,しかも市町に給人が進出し,市屋敷を所有することもみられた。…

※「市町」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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