(読み)コツ

デジタル大辞泉 「忽」の意味・読み・例文・類語

こつ【忽】[漢字項目]

人名用漢字] [音]コツ(漢) [訓]たちまち ゆるがせ
たちまち。「忽焉こつえん忽然
おろそか。「忽略軽忽粗忽

こつ【×忽】

[名]数の単位。1の10万分の1。→くらい[表]
[ト・タル][文] [形動タリ]にわかであるさま。突然。「として消え去る」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「忽」の意味・読み・例文・類語

ゆるがせ【忽】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「いるかせ(忽)」の変化した語。古くは「ゆるかせ」 )
  2. 物事をいい加減にするさま。なおざりにするさま。おろそか。
    1. [初出の実例]「されども此入道の世の間は、聊も忽緒(ユルカセ)に申者なかりけり」(出典源平盛衰記(14C前)一)
  3. きつくないさま。ゆるやかなさま。寛大なさま。また、のんびりしたさま。
    1. [初出の実例]「惣じて、親の子にゆるかせなるは、家を乱すのもとひなり」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)

忽の語誌

( 1 )「いるかせ」が「ゆるかせ」に転じるのは、古辞書や「平家物語」の諸本などから、室町期に入ってからと考えられる。→「いるかせ(忽)」の語誌。
( 2 )の意は「いるかせ」にはみえず、「ゆるかせ」のみで、しかも近世期に入ってからのものであるから、語源として、を「ゆる(緩)」と関係づけることには問題がある。


いるかせ【忽】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 いい加減であるさま。なおざり、おろそかであるさま。軽々しい。ゆるがせ。いるかし。ゆるがし。
    1. [初出の実例]「清浄声美にして、疎忽(イルカセニ)を得じ」(出典:護摩蜜記長元八年点(1035))
    2. 「此禅門世ざかりのほどは、聊(いささか)いるかせにも申者なし」(出典:平家物語(13C前)一)

忽の語誌

色葉字類抄」「観智院本名義抄」では、「いるかせ」の形だけだが、「文明本節用集」では「いるかせ」「ゆるかせ」の両形が見られ、「天草本平家物語」「天草本伊曾保物語」や「日葡辞書」などになると、「ゆるかせ」の形のみになる。


こつ【忽】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 数の単位の一つ。糸(し)十分の一。一の十万分の一。小数五位名称。〔和英語林集成再版)(1872)〕〔史記注‐太史公自序
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙 突然であるさま。にわかであるさま。
    1. [初出の実例]「忽(コツトシテ)とよむが好ぞ」(出典:両足院本山谷抄(1500頃)一)
    2. 「馬独り忽と戻りぬ飛ぶ蛍〈碧梧桐〉」(出典:続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉夏)

ゆるがし【忽】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 「ゆるがせ(忽)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「此詩は物のゆるかしになげやりわざなことをそしったぞ」(出典:玉塵抄(1563)一七)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「忽」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 8画

[字音] コツ
[字訓] たちまち・ゆるがせ・かすか

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は勿(ふつ)。勿に・笏(こつ)の声がある。〔説文〕十下に「るるなり」とあり、〔漢書、揚雄伝賛〕に「時に人皆之れを(ゆるがせ)にす」のように、字をとし、略の意に用いる。は祝の器である曰(えつ)をみだりに啓(ひら)く意の字で、忽略の意は、その開の意と関連がある。「たちまち」と訓する・溘・乍・奄は、みな状態をいう形況の語で、忽もその意が原義。その状を恍惚という。

[訓義]
1. たちまち、うっとり、形容しがたい状態をいう。
2. うっかり、ゆるがせ、ゆるがせにする、わすれる。
3. あなどる、かろんずる、たやすい。
4. ほのか、かすか、小さなもの、つきる、ほろびる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕忽 タチマチ・トシ・イルガセ・ワスル・ホロブ・ナイカシ(ロ)・オコタル・アラシ・ハルカニ・ニハカ・イカル・カロシ・カシク/忽 イルガセ 〔字鏡集〕忽 ハルカ・アラシ・ニハカ・イルカシニス・ウレフ・スミヤカナリ・ナイカシロ・ワスル・カロシ

[声系]
〔説文〕に忽声としてを収める。は疾風。

[語系]
忽・xutは同声。またxiutは忽の声義をとる語である。

[熟語]
忽易忽遺忽焉忽遽・忽区忽慌・忽荒・忽忽傲・忽忽・忽視忽而・忽似忽爾・忽若・忽諸忽如・忽然忽怠・忽地・忽的・忽突・忽薄・忽微・忽杪・忽忘・忽漫・忽・忽略
[下接語]
軋忽・闇忽・佚忽・奄忽・簡忽・岸忽・翕忽・倨忽・軽忽・恍忽・荒忽・糸忽・忽・忽・絶忽・閃忽・粗忽・疎忽・惰忽・怠忽・治忽・超忽・恬忽・突忽・飄忽・秒忽・平忽・忽・暴忽・悠忽・陵忽

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android