性感染症とのどの症状(読み)せいかんせんしょうとのどのしょうじょう

家庭医学館 「性感染症とのどの症状」の解説

せいかんせんしょうとのどのしょうじょう【性感染症とのどの症状】

●口やのどにも多様な症状がおこる
 性病とは従来、梅毒(ばいどく)、淋病(りんびょう)、軟性下疳(なんせいげかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくげしゅ)(第四性病)の4疾患を称していましたが、現在はその他にエイズ、クラミジア感染症、伝染性単核症(でんせんせいたんかくしょう)、単純ヘルペスなど20種以上の、性的行為で感染する病気を性感染症といいます。これらの病気は性行為の多様化、風俗の変化により、口やのどにも種々の症状を現わし、また同時に、口やのどが感染源になることがあるといわれています。そのため、口やのどに現われる性感染症に対しても十分注意しなければなりません。
 口やのどに白斑(はくはん)や潰瘍(かいよう)、腫瘤(しゅりゅう)が認められるときには、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)や口腔外科(こうくうげか)の専門医の診察を受けてください。
■エイズ(「エイズ/HIV感染症」)
 エイズはHIV感染後、無症状で数年~10年の期間を経て、エイズ特有の症状を現わしてきます。全身的には、リンパ節が腫(は)れ、発熱、体重減少、下痢げり)、だるさなどが生じます。
 口やのどには白苔(はくたい)(カンジダ)や白斑(毛様白斑症(もうようはくはんしょう))あるいは反復性ヘルペスカポジ肉腫(にくしゅ)、歯肉炎(しにくえん)などが現われます。進行すると、カリニ肺炎トキソプラズマによる中枢神経(ちゅうすうしんけい傷害やクリプトコッカス髄膜炎(ずいまくえん)、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)も現われます。最近、梅毒もあわさったエイズ例もみられるようになりました。
 診断には、HIV抗体(こうたい)検査が行なわれます。
■梅毒(ばいどく)(「梅毒」)
 トレポネーマパリダの感染でおこります。菌保有者との性交渉により、感染後約3週間で第1期の変化が現われます。くちびる、舌(した)や扁桃(へんとう)に痛みの少ない大豆(だいず)大の結節(けっせつ)(初期硬結(しょきこうけつ))ができます。それがさらに潰瘍(硬性下疳(こうせいげかん))となります。感染直後では、血清梅毒反応(けっせいばいどくはんのう)は陽性になりません。
 第2期(感染後3か月~3年)になると、全身に菌がまわり、からだにいろいろな症状が出てきます。口や舌、のどには円形の白斑が数か所でき、これが融合して大きく拡大します。とくにのどには、蝶形(ちょうけい)の白斑が現われます。しかし、二次感染がないと、痛みは軽度です。抗生物質を飲むと白斑が一時的に消えることがあり、治ったと思われることがありますが、菌は残っていますので素人療法は危険です。皮膚には赤い斑点(はんてん)(バラ疹(しん))が、陰部には潰瘍やコンジローマが生じます。
 この時期になると、梅毒血清反応は強陽性になります。この時期に治療を行なわないと、進行して3期となり、上あごに穿孔(せんこう)ができたり、鞍鼻(あんび)となり、さらに4期には認知症や大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)が生じてきます。
■クラミジア感染症(コラム「クラミジア感染症」)
 クラミジアトラコマチスは、従来の目のトラコーマや、鼠径リンパ肉芽腫の原因菌として知られていましたが、近年、非淋菌性尿道炎(ひりんきんせいにょうどうえん)、子宮頸管炎(しきゅうけいかんえん)など性感染症の原因となっています。最近は口やのどにも菌が検出されるようになりました。症状は、のどの異常感やせきなどですが、特徴的な病変はみられません。のどのぬぐい液によって菌を検出します。これが検出されたときには、ほかの性感染症の合併も考えなければなりません。そのほか、口腔咽頭(こうくういんとう)には淋菌感染もおこります。
■単純ヘルペス(「単純ヘルペス」)
 性器のヘルペスが口腔咽頭にもみられることがあります。性的接触後3~7日の潜伏期を経て、性器のヘルペスのほか、くちびるや口、のどにもヘルペスやびらんができ、高熱や激しいのどの痛み、嚥下痛(えんげつう)が生じます。
 診断は病理組織の検査や血液のヘルペス抗体値によります。治療は一般の抗生物質では効果がなく、アシクロビルの点滴によります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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