憑依(読み)ヒョウイ(その他表記)spirit possession

デジタル大辞泉 「憑依」の意味・読み・例文・類語

ひょう‐い【×憑依】

[名](スル)
頼りにすること。よりどころにすること。
「われらの温かなる―の対象となる人格的の神」〈倉田愛と認識との出発
霊などがのりうつること。「悪霊憑依する」

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精選版 日本国語大辞典 「憑依」の意味・読み・例文・類語

ひょう‐い【憑依・馮依】

  1. 〘 名詞 〙
  2. たのみにすること。よりどころとすること。
    1. [初出の実例]「此乃ち方今開化を語る者の専ら憑依とし、口実とする所なり」(出典:開化本論(1879)〈吉岡徳明〉下)
    2. [その他の文献]〔詩経伝‐大雅・巻阿〕
  3. 霊などが乗り移ること。憑(つ)くこと。〔布令字弁(1868‐72)〕
    1. [初出の実例]「憑依の去った巫者のやうに、身も心もぐったりとくづをれ」(出典:李陵(1943)〈中島敦〉三)
    2. [その他の文献]〔論衡‐死偽〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「憑依」の意味・わかりやすい解説

憑依
ひょうい
spirit possession

人の生霊・死霊,動物霊などが人間の体内に入ることによって,その人が精神的,肉体的に影響を受ける現象をいう。その底には,霊は肉体から自由に出入りできるとする信仰がある。また人に乗移った霊を憑物 (つきもの) という。このような憑霊信仰は,シャーマン霊媒の憑依のような統制的なものと,憑かれた霊によって人が病気や異常な精神状態を起すような非統制的なものに分れる。前者が正常な望ましい憑霊であるのに対して,後者は概して異常な病的現象とされ,治療されるべき対象となる。また憑霊には,一時的に他の霊が乗移るという「憑き」の現象と,遺伝的,伝染的に家系に伝わるという「持ち」の現象とがある。日本では「持ち」の家はきつね持ち,犬神筋などと呼ばれ,他から縁組を嫌われ,差別も受けることになるので,憑物筋俗信の根強い地方では,社会的葛藤を呼起すことが多かった (→犬神 , 狐憑 ) 。乗移るとされる動物霊は,たぬき,きつね,へび,ねこ,さる,いぬ,河童などがあげられる。憑物は祈祷師などが落してくれると信じられており,憑かれた者はうわごとを言ったり,奇妙な行動をとるなどの異常を起すが,また身体的病気でも憑物のせいにされることがある。憑依現象は世界中に広くみられ,インドネシアではとらやわにに憑かれるとされる。

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普及版 字通 「憑依」の読み・字形・画数・意味

【憑依】ひようい

たのむ。また、霊がよりつく。〔論衡、死偽〕匹夫匹彊死(きやうし)するや、其の魂魄(こんぱく)、ほ能く人に憑依して、以て(いんれい)を爲す。

字通「憑」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の憑依の言及

【シャマニズム】より


[特質]
 シャーマンが他の呪術・宗教的職能者と異なる点は,超自然的存在とのかかわり方における〈直接性〉にある。直接性とはシャーマンがみずからの魂を肉体から分離させ,この魂が他界の神霊や精霊を訪ねて彼我直接に接触することであり,逆に神霊・精霊を招き呼んでみずからに憑依(ひようい)させ,あるいは神霊・精霊と直接話し合い,指示を仰ぐことである。一般に前者を〈脱魂型ecstasy type〉,後者を〈憑霊型possession type〉のシャーマンと呼んでいる。…

【憑物】より

…憑物とは,文字どおりに解すれば,人間その他の事物に憑依(ひようい)する〈もの〉,つまり霊のことである。このような意味にそって憑物をめぐる信仰を理解するならば,一方に事物に憑く可能性をもったさまざまな霊たちの群,他方にはそうした霊に憑かれる人間を含むさまざまな事物の群,そして特定の霊が特定の事物に憑いた状態,つまり憑霊現象の群が想定される。…

【トランス】より

…催眠によって表面の意識が消失し,心の内部の自律的な思考や感情があらわれる場合や,ヒステリー,カタレプシーによる意識の消失,狐やその他の霊に憑(つ)かれたとされるとき,または外界との接触を絶つ宗教的修行による忘我・法悦状態などを指す。このトランス状態に入って,超自然的存在である神や精霊,死霊などと接触し,卜占,予言,治療,祭儀を行う呪術‐宗教的職能者をシャーマンというが,シャーマンのトランスには霊魂が身体から離れて異界に移動し,神や霊と接触する脱魂(エクスタシーecstasy)と,超自然的存在がシャーマンを訪ねる憑依(ポゼッションpossession)との,2種類の神秘体験があるといわれる。日本におけるシャーマン的行為は主として憑依による。…

※「憑依」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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