屋根の妻において,棟木や母屋桁(もやげた),軒桁の木口を隠すために破風板(はふいた)の下に取り付けられた装飾用の材をいう。火災を嫌って水に関係の深い魚の形を付けたともいうが,日本では魚形のものは用いていない。ただ一つ東寺の慶賀門のものが魚の尾の形とみえないこともない。取り付ける場所により,棟木位置のものを単に懸魚または拝み懸魚,母屋桁や軒桁の位置に付けるものを桁隠しまたは降り懸魚といって区別することもある。また,唐破風(からはふ)の棟木位置に付けるものを兎の毛通し(うのけとおし)という。形によって,ふつう猪目(いのめ)懸魚,蔐(かぶら)懸魚,三花(みつばな)懸魚,梅鉢懸魚の4種に分けられる。猪目懸魚は最も古くからあり,猪目と呼ぶハート形のくり抜きが付く。蔐懸魚は輪郭は猪目懸魚に似るが,猪目がない。三花懸魚は蔐懸魚を3個組み合わせた形をしたもので,禅宗様に用いられた。梅鉢懸魚はほぼ六角形をした簡単なもので,書院や客殿,城郭に多く用いられた。いずれも中央上方に六葉と樽の口と呼ぶ飾りが付くが,元来はこれで棟木や桁の木口に打ち付けたものであろう。懸魚は時代がくだるとともに装飾性を増す傾向があって,左右にひれを付けるものが多くなり,近世には懸魚のかわりに鳥や竜の彫刻を付けるものもある。
執筆者:浜島 正士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本建築で、妻の破風板(はふいた)の下にあって棟木(むなぎ)や桁(けた)の木口を隠す飾り板。簡単なものは五角形あるいは六角形の切(きり)懸魚で、ついで梅鉢(うめばち)懸魚となり住宅、門などに用いられる。社寺の建物では和様のものに猪目(いのめ)懸魚、禅宗様には(かぶら)懸魚、三花(みつはな)懸魚がつく。近世になると浮彫り、透彫りの彫刻を飾るものもある。破風板の途中で桁を隠す懸魚は降(くだり)懸魚あるいは桁隠(かくし)ともいう。また、唐破風の中央につくものを兎毛通(うのけとおし)という。
[工藤圭章]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…妻飾には豕扠首(いのこさす),二重虹梁蟇股,虹梁大瓶束,狐格子などがある。破風は桁と棟木にかけられるが,それらの木口を隠すために,繰形(くりかた)で装飾を施した懸魚(げぎよ)がつけられる。
[壁]
壁は真壁がほとんどで,大壁は江戸時代の土蔵造の経蔵や特殊な堂にしか見られない。…
※「懸魚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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