警察の組織について定めた法律。昭和29年法律第162号。警察事務の地方分権と政治的中立の確保を図る見地から、国および都道府県の警察組織の基本的内容を規定している。
警察の責務について、個人の生命・身体・財産を保護し、犯罪の予防および捜査など公共の安全と秩序の維持にあたることと定めている。都道府県警察がこの責務に任ずるが、不偏不党かつ公正中立を旨とし、権限を乱用してはならない。
国の警察組織を以下のように規定している。国家公安委員会および警察庁が置かれる。国家公安委員会は、警察行政を民主的に管理して、その官僚化・独善化を防止するとともに、政治的中立性を確保するために設けられたもので、内閣総理大臣の所轄の下に置かれ、国務大臣たる委員長および5人の委員により構成される。国の公安に係る警察運営(警察の制度に関すること、大規模災害や国際テロ事件への対処など)をつかさどり、全国的見地から斉一を期する必要のある事務(警察装備、犯罪鑑識等)を統括し、および警察行政に関する調整を行うことを任務としている。国家公安委員会は警察庁を管理(大綱方針を定めて監督すること)し、警察庁は都道府県警察の指揮監督等を行う。また、国家公安委員会は、法律によりその権限とされた事務(国家公安委員会規則の制定等)を自ら行い、警察庁が補佐する。
同様に、都道府県の警察組織として、都道府県公安委員会と都道府県警察(警視庁と道府県警察本部)が置かれる。都道府県公安委員会は知事の所轄の下に置かれ、都道府県警察を管理する。実働組織である都道府県警察の長(警視総監または道府県警察本部長)は、国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て任命する。都道府県の区域を分けて、各地域を管轄する警察署が置かれる。警視庁および道府県警察本部の内部組織や警察署の設置については、条例で定められる。都道府県警察の警察官は、都道府県における責務達成に必要がある場合には、その区域外でも権限行使をすることが認められる。
[田村正博]
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警察法とは,講学上の概念としては警察に関する独自の法体系の総称であるが,実定法としての警察法とは,1954年に制定・公布されその後十数回にわたって改正された警察法のことをいう。同法は,日本の実定警察制度でいう警察の責務として,〈個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮補,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ること〉を定めている。さらに同法は,警察の組織として,国家公安委員会や警察庁などの中央警察機関のほか,都道府県警察などの地方警察機関についても規定している。とくに警察法の定める緊急事態における特別措置は重要である。
すなわち,大規模な災害・騒乱等の緊急事態に際して,内閣総理大臣は国家公安委員会の勧告に基づき,全国または一部の地域について緊急事態の布告を発することができ,その場合には警察機関を一時的ではあれ自己の統制下におくことになっている(71,72条)。
執筆者:原野 翹
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第2次大戦後の警察制度の基本法。1947年(昭和22)12月公布。警察の地方分権化がはかられ,市および人口5000人以上の町村における自治体警察と,それ以外の地域における国家地方警察の2本立てを定めた。しかし市町村財政の圧迫,警察行政の非能率化を招いたため,51年住民投票による自治体警察の廃止規定を追加。54年に全面改正され,都道府県警察に一本化するとともに,国家公安委員会・警察庁を頂点とする能率的な体制を定めた。
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