出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
栃木県日光市、中禅寺湖北方に位置する湿原を含む高原。男体(なんたい)山など四囲山を巡らす盆地床に戦場ヶ原はある。その面積はおよそ4.4平方キロメートル。標高約1400メートルは中禅寺湖より130メートルも高い。もとは水をたたえる湖であったが、男体山(2486メートル)や太郎山(2368メートル)などの山腹の侵食による土砂がこれを埋め尽くし、いまは干上がり、水面は三本松南の赤沼に降雨後などに限ってみられるにすぎない。しかし、湿原が国道120号と湯川との間の平坦(へいたん)地に広がり、日光国立公園の特別保護区域に指定されている。高層湿原にはオオアゼスゲ、ワタスゲなどが谷地坊主(やちぼうず)をつくり、ヌマガヤ、ミズゴケ、モウセンゴケなどの湿地植物が特異な景観をみせており、ホザキシモツケがこれを取り囲む。自然研究路が湯川べりにカラマツの林を縫い、湿原を木道で渡って湯滝と竜頭滝(りゅうずのたき)を結んでいる。日光と沼田を結ぶ国道120号が原を縦断する。戦場ヶ原の地名は、男体山神の大蛇と赤城(あかぎ)山神の大ムカデがここで領地をめぐって争ったとする伝説にちなむという。中宮祠(ちゅうぐうし)から赤沼までバスで15分。なお、戦場ヶ原は「奥日光の湿原」の一部として2005年(平成17)に、ラムサール条約登録湿地となった。
[平山光衛]
栃木県日光市,中禅寺湖の北に広がる標高約1400mの乾燥湿原。男体(なんたい)山,大真名子(おおまなご)山,太郎山,三岳,高山などに囲まれた盆地の主部を占め,高層湿原の区域は,日光国立公園の特別保護区域に指定されている。男体山の火山活動終期に噴出した軽石流堆積物を湖盆とする古戦場ヶ原湖が,主として北西山地からの土砂によって埋め立てられてできた。現在は赤沼などに湖のなごりをとどめるだけで,湿原も狭まりつつある。原の西端を湯川が曲がりくねって南流し,竜頭(りゆうず)滝となって中禅寺湖に注ぐ。湿原にはヒメシャクナゲ,ツルコケモモ,モウセンゴケなど湿地特有の植物がみられ,シラカバ,ミズナラ,ズミの樹林がこれを囲んでいる。湯川沿いに通じる自然研究路,中宮祠・湯元歩道からその景観を観察できる。西に小田代が原,北には光徳沼,北西に湯滝,湯ノ湖,日光湯元温泉があり,国道120号線が縦貫する。地名の由来は,男体山の主の大蛇と赤城山の主の大ムカデがここで領地争いをしたという伝説により,この戦いで両者が流した血が赤沼になったという。
執筆者:平山 光衛
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