日光火山群中の単独峰で、標高二四八四・四メートルの円錐状成層火山。南面に
古くから
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
栃木県日光市,中禅寺湖の北東にそびえる成層火山。標高2486m。二荒(ふたら)山,日光山,黒髪山ともいう。北東には大真名子(おおまなご)山(2375m),小真名子山(2323m),女峰(によほう)山(2464m),赤薙(あかなぎ)山(2010m),北西には太郎山(2368m),山王帽子(さんのうぼうし)山(2077m)が連なり,戦場ヶ原,湯ノ湖を隔てた白根山(日光白根)などとともに日光火山群を形成する。うち男体,女峰,太郎の三つの山は日光三山(広義の日光山)とも呼ばれる。日光火山群中,歴史時代に活動記録のあるのは白根山のみである。男体山の形成期は女峰山,赤薙山よりは新しく,白根山よりは古いと考えられており,更新世後期~完新世の輝石安山岩,石英安山岩などからなる。山頂に直径約400mの火口があり,北に火口瀬が開く。中禅寺湖は男体山の溶岩により大谷(だいや)川がせき止められたものである。山腹に大薙,古薙や1902年に南麓の中宮祠を中禅寺湖に押し出した観音薙などの浸食谷がみられるが,火山の原面はよく残されており,秀麗な山容をもつ。山腹には亜高山性のウラジロモミ,ダケカンバ,ブナ,ミズナラなどが茂る。山頂には二荒山神社奥宮があり,南麓の中宮祠から登山道が通じる。8月1~7日には登拝大祭が行われ,午前0時の太鼓の合図とともに多くの人々が山頂を目指す。
執筆者:平山 光衛
下野(しもつけ)の修験僧勝道上人(737-817)は初めて男体山頂をきわめ,782年(延暦1)日光山を開いたと伝える。以来,日光山の主峰である男体山は補陀落(ふだらく)山,二荒山とも呼ばれ,神体山としてまた修験の霊場として崇敬された。近世には日光山内に東照宮が建立され,江戸幕府の精神的主柱としての役割も果たした。鏡,銅印,錫杖,独鈷(どつこ),御正体(みしようたい)(鏡像),種子札,禅頂(定)(ぜんじよう)札,おびただしい古銭など多数の宗教的遺物が山頂から出土したことも男体山信仰を特徴づけている。遺物自体は修行者の用具および神への奉賽物としての性格を有しているが,御正体,種子札などからは日光山にまつられる神仏や日光権現の形成時期を知ることができ,禅頂札からは,山籠に中心をおく修行から山頂への登拝に重点をおく修行に変化した点が知りうる。
→二荒山神社
執筆者:宮本 袈裟雄
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栃木県西部、日光市にある、中禅寺湖の北東にそびえる山。黒髪山(くろかみやま)ともいい、初期の5万分の1地形図には二荒山(ふたらさん)とも記載されている。標高2486メートルは女峰(にょほう)山、赤薙(あかなぎ)山などの日光諸火山中、白根(しらね)山に次ぐ。輝石安山岩、石英安山岩からなる成層火山で、全体として火山の原形がよく保存されて美しい山容を呈し、日光国立公園の中核をなす。山頂に径約800メートルの火口があり、ここから北に火口瀬が開く。山腹には大薙(おおなぎ)、観音(かんのん)薙、古薙などの侵食谷が放射状に発し、侵食の階梯(かいてい)としては幼年期にある。近年、山腹の薙に櫛(くし)の歯のように砂防堰堤(えんてい)が築造され、むしろ痛々しい感を与えている。中禅寺湖は男体山溶岩が大谷(だいや)川をせき止めた結果生成した湖で、湖畔の二荒山神社から登山路がまっすぐ山頂に向かい、8月1日の山開きには前日から集まった登山客が一斉に深夜の登山を繰り広げ、8月7日までの1週間登拝祭が行われる。782年(延暦1)勝道上人(しょうどうしょうにん)がこの山を開き、修験(しゅげん)の禅頂路(入峰(にゅうぶ)修行の路)が北麓(ほくろく)の志津を経て大真名子(おおまなご)山へと続いていた。1924年(大正13)などの山頂遺跡調査により、鏡鑑、密教法具、古銭など奈良時代から江戸時代に及ぶ祭祀(さいし)遺品が発掘され、これらは国の重要文化財に指定されている。山頂からの眺望はすばらしい。
[平山光衛]
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…しかし類語としては古く《古事記》《日本書紀》や《万葉集》にミムロヤマ(御諸,三諸,御室)があり,また《万葉集》や《出雲国風土記》に広く使われているカンナビ,カンナビヤマ(神奈備)がある。男体山,女体山の名も古い類語と考えられる。古来山を神体とする祭祀の原型は全国各地の祭祀遺跡や古社に見いだされるが,現在も山を直接祭祀する社殿形式を存続する著名な神社は,奈良県の大神神社,長野県の諏訪大社および埼玉県の金鑽(かなさな)神社である。…
…栃木県日光市の西部,男体(なんたい)山(二荒(ふたら)山)の南に位置する。湖面標高1269m,面積は11.5km2で,標高1000m以上の湖としては日本最大。…
…表・奥・裏日光は日光国立公園に含まれ,前日光は県立自然公園に指定されている。日光は雄大な自然に恵まれた地であり,また男体(なんたい)山を中心に奈良時代末期に勝道によって開かれた山岳仏教の聖地で,近世には徳川家康をまつる日光東照宮の造営により栄え,国宝などに指定された建築物や文化財も多い。このため〈日光を見ずして結構というなかれ〉とまでいわれ,日本を代表する観光地の一つとして国際的にも知られている。…
※「男体山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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