男体山(読み)ナンタイサン

デジタル大辞泉 「男体山」の意味・読み・例文・類語

なんたい‐さん【男体山】

栃木県北西部、日光市にある火山。標高2486メートル。山麓に中禅寺湖がある。古くからの山岳霊場。二荒山ふたらさん黒髪山国神山くにかみさん

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精選版 日本国語大辞典 「男体山」の意味・読み・例文・類語

なんたい‐さん【男体山】

  1. 栃木県日光市にある円錐状成層火山日光火山群の主峰で、山頂に二荒山(ふたらさん)神社の奥宮があり修験道の山として知られる。西側の麓に戦場ケ原、南側の麓に中禅寺湖がある。標高二四八四メートル。日光山日光富士。二荒山。黒髪山。国神山。

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日本歴史地名大系 「男体山」の解説

男体山
なんたいさん

大子町と水府すいふ村との境界線上に位置し、生瀬富士なませふじから南へ走る男体山系の最高峰で、標高六五三・九メートル。一等三角点の山。東に太平洋、南に筑波山、北に八溝やみぞ山を遠望し、西方眼下に奥久慈渓谷を望む。「水府志料」頃藤ころふじ村の項に「高倉村境にあり。登る事一里十八町、嶺に白き石あり。土人男体権現と云。此村より登るは至て嶮也」とあり、「新編常陸国誌」には「水戸領地理志云、久慈郡高倉村ニアリ、高一里二十六町山頂ニ大石アリ、コレヲ神体トシ、男体権現ト称ス、険岨ニシテ風景尤奇絶ナリ、毎年二月十五日祭日、婦人ノ頂ニ登ルコトヲ禁ズ」とみえる。


男体山
なんたいさん

日光火山群中の単独峰で、標高二四八四・四メートルの円錐状成層火山。南面に中禅寺ちゆうぜんじ湖が広がる。山頂部の旧火口は直径約四〇〇メートル、火口壁北部は欠落しているため馬蹄形をしている。山腹各所に薙とよばれる山崩れの跡がみられ、南東部におお薙、南西部に薙、北部に御真仏ごしんぶつ薙、南部に明治三五年(一九〇二)崩落の観音かんのん薙などがある。

古くから補陀洛ふだらく山・二荒山・黒髪くろかみ山ともよばれた二荒山神社の神体山で、南麓湖畔には中宮祠、山頂には奥宮が祀られている。山頂の遺跡の出土品などから、奈良時代末期には信仰されていたとみられ、弘仁五年(八一四)空海が撰文した沙門勝道歴山水瑩玄珠碑并序(性霊集)には「補陀洛山」とあり、勝道が神護景雲元年(七六七)から度度登頂を試み、ついに天応二年(七八二)に山頂を極めたと記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「男体山」の意味・わかりやすい解説

男体山 (なんたいさん)

栃木県日光市,中禅寺湖の北東にそびえる成層火山。標高2486m。二荒(ふたら)山,日光山,黒髪山ともいう。北東には大真名子(おおまなご)山(2375m),小真名子山(2323m),女峰(によほう)山(2464m),赤薙(あかなぎ)山(2010m),北西には太郎山(2368m),山王帽子(さんのうぼうし)山(2077m)が連なり,戦場ヶ原,湯ノ湖を隔てた白根山日光白根)などとともに日光火山群を形成する。うち男体,女峰,太郎の三つの山は日光三山(広義の日光山)とも呼ばれる。日光火山群中,歴史時代に活動記録のあるのは白根山のみである。男体山の形成期は女峰山,赤薙山よりは新しく,白根山よりは古いと考えられており,更新世後期~完新世の輝石安山岩石英安山岩などからなる。山頂に直径約400mの火口があり,北に火口瀬が開く。中禅寺湖は男体山の溶岩により大谷(だいや)川がせき止められたものである。山腹に大薙,古薙や1902年に南麓の中宮祠を中禅寺湖に押し出した観音薙などの浸食谷がみられるが,火山の原面はよく残されており,秀麗な山容をもつ。山腹には亜高山性のウラジロモミ,ダケカンバ,ブナ,ミズナラなどが茂る。山頂には二荒山神社奥宮があり,南麓の中宮祠から登山道が通じる。8月1~7日には登拝大祭が行われ,午前0時の太鼓の合図とともに多くの人々が山頂を目指す。
執筆者:

下野(しもつけ)の修験僧勝道上人(737-817)は初めて男体山頂をきわめ,782年(延暦1)日光山を開いたと伝える。以来,日光山の主峰である男体山は補陀落(ふだらく)山,二荒山とも呼ばれ,神体山としてまた修験の霊場として崇敬された。近世には日光山内に東照宮が建立され,江戸幕府の精神的主柱としての役割も果たした。鏡,銅印,錫杖,独鈷(どつこ),御正体(みしようたい)(鏡像),種子札,禅頂(定)(ぜんじよう)札,おびただしい古銭など多数の宗教的遺物が山頂から出土したことも男体山信仰を特徴づけている。遺物自体は修行者の用具および神への奉賽物としての性格を有しているが,御正体,種子札などからは日光山にまつられる神仏や日光権現の形成時期を知ることができ,禅頂札からは,山籠に中心をおく修行から山頂への登拝に重点をおく修行に変化した点が知りうる。
二荒山神社
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「男体山」の意味・わかりやすい解説

男体山
なんたいさん

栃木県西部、日光市にある、中禅寺湖の北東にそびえる山。黒髪山(くろかみやま)ともいい、初期の5万分の1地形図には二荒山(ふたらさん)とも記載されている。標高2486メートルは女峰(にょほう)山、赤薙(あかなぎ)山などの日光諸火山中、白根(しらね)山に次ぐ。輝石安山岩、石英安山岩からなる成層火山で、全体として火山の原形がよく保存されて美しい山容を呈し、日光国立公園の中核をなす。山頂に径約800メートルの火口があり、ここから北に火口瀬が開く。山腹には大薙(おおなぎ)、観音(かんのん)薙、古薙などの侵食谷が放射状に発し、侵食の階梯(かいてい)としては幼年期にある。近年、山腹の薙に櫛(くし)の歯のように砂防堰堤(えんてい)が築造され、むしろ痛々しい感を与えている。中禅寺湖は男体山溶岩が大谷(だいや)川をせき止めた結果生成した湖で、湖畔の二荒山神社から登山路がまっすぐ山頂に向かい、8月1日の山開きには前日から集まった登山客が一斉に深夜の登山を繰り広げ、8月7日までの1週間登拝祭が行われる。782年(延暦1)勝道上人(しょうどうしょうにん)がこの山を開き、修験(しゅげん)の禅頂路(入峰(にゅうぶ)修行の路)が北麓(ほくろく)の志津を経て大真名子(おおまなご)山へと続いていた。1924年(大正13)などの山頂遺跡調査により、鏡鑑、密教法具、古銭など奈良時代から江戸時代に及ぶ祭祀(さいし)遺品が発掘され、これらは国の重要文化財に指定されている。山頂からの眺望はすばらしい。

[平山光衛]


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百科事典マイペディア 「男体山」の意味・わかりやすい解説

男体山【なんたいさん】

関東平野北縁,日光市の西方にある成層火山。二荒(ふたら)山,日光山とも呼ばれる。標高2486m。安山岩からなり,多数の放射谷がみられる。日光国立公園に属し,南麓に中禅寺湖,西方に戦場ヶ原がある。勝道上人が開いた山岳信仰の霊地で,山頂に二荒山神社奥宮があり,毎年8月1〜7日登拝祭が催される。
→関連項目日光[市]日光日本百名山

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「男体山」の意味・わかりやすい解説

男体山
なんたいさん

「二荒 (ふたら) 山」「黒髪山」「国神山」ともいう。栃木県西部,那須火山帯に属する日光火山群の主峰。標高 2484m。輝石安山岩,火山灰,火山砂礫などで形成された円錐状成層火山で,山型は美しく,日光富士とも呼ばれる。日光国立公園の代表的観光地の1つ。山頂には直径 400mほどの火口があり,斜面には放射状の薙 (なぎ) と呼ばれる浸食谷を刻む。南麓に二荒山神社があり,かつては修験の山であったが,いまは毎年8月1日から7日までの登拝祭に登山客が多い。付近には西流した溶岩流が湯川をせきとめて形成した戦場ヶ原,竜頭滝,南流した溶岩流が大谷 (だいや) 川をせきとめて形成した中禅寺湖,華厳滝などがあり風光に富む。

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事典 日本の地域遺産 「男体山」の解説

男体山

(栃木県日光市)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「男体山」の解説

男体山

(栃木県)
日本百名山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の男体山の言及

【神体山】より

…しかし類語としては古く《古事記》《日本書紀》や《万葉集》にミムロヤマ(御諸,三諸,御室)があり,また《万葉集》や《出雲国風土記》に広く使われているカンナビ,カンナビヤマ(神奈備)がある。男体山,女体山の名も古い類語と考えられる。古来山を神体とする祭祀の原型は全国各地の祭祀遺跡や古社に見いだされるが,現在も山を直接祭祀する社殿形式を存続する著名な神社は,奈良県の大神神社,長野県の諏訪大社および埼玉県の金鑽(かなさな)神社である。…

【中禅寺湖】より

…栃木県日光市の西部,男体(なんたい)山(二荒(ふたら)山)の南に位置する。湖面標高1269m,面積は11.5km2で,標高1000m以上の湖としては日本最大。…

【日光】より

…表・奥・裏日光は日光国立公園に含まれ,前日光は県立自然公園に指定されている。日光は雄大な自然に恵まれた地であり,また男体(なんたい)山を中心に奈良時代末期に勝道によって開かれた山岳仏教の聖地で,近世には徳川家康をまつる日光東照宮の造営により栄え,国宝などに指定された建築物や文化財も多い。このため〈日光を見ずして結構というなかれ〉とまでいわれ,日本を代表する観光地の一つとして国際的にも知られている。…

※「男体山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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