精選版 日本国語大辞典 「打込」の意味・読み・例文・類語
うち‐こみ【打込】
- 〘 名詞 〙
- ① たたいたり、突いたりして物を中へ入れること。
- [初出の実例]「琴の図と『うつしよ』の四字を、銀で打込(ウチコミ)にした菊版半切の切放し」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏)
- ② 人にほれこむこと。また、物事に熱中すること。
- [初出の実例]「彼女の彼への並々ならぬ打込みも与って力があった」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉七)
- ③ 能楽の基本的な型。扇または手に持つ小道具を頭上から腹部の前に下ろして正面をさすもの。
- ④ 文楽人形の型。戦いの様子を表わす動作で、刀などをかざしながら足拍子を踏むもの。
- ⑤ 能楽の囃子(はやし)手くばりの一つ。曲の中間で、それまで続けてきた囃子に一段落をつけるもの。主に、大鼓、小鼓だけで演奏する。
- [初出の実例]「小皷は常の打込をうつ事本也」(出典:檜垣型付(1665))
- ⑥ 文楽の下座囃子。遠寄せの囃子を激しくたたみ込んではやすもの。
- ⑦ 歌舞伎の幕開き、幕切れなどで、大太鼓を勢いよく打つこと。
- [初出の実例]「打込(ウチコミ)〈略〉是より二ばん目はじまり、左様に御らん下さり升(ませ)ふといふ時、打こむ太鼓なり」(出典:絵本戯場年中鑑(1803)上)
- ⑧ 剣道、相撲などのけいこで、基本の動きを会得するために、続けざまに、相手にうってかかること。
- ⑨ 球技で、相手の陣へ球を強く打ち入れること。
- ⑩ 野球などで、くり返し球を打って練習すること。
- ⑪ ( 囲碁で )
- (イ) 相手の陣へ石を打ち入れること。
- (ロ) 何回か対局して一定の回数を相手に勝ち越すこと。手合割りを改める勝負。
- ⑫ 釣りで、さおを振ってねらった水面に針を入れること。
- ⑬ 清酒醸造の一工程。仕込んだ枝桶を、発酵の経過を見計らって順次親桶に合併すること。
- [初出の実例]「打こみの酒の友来るしぐれ哉〈夕兆〉」(出典:俳諧・続有礒海(1698)雑)
- ⑭ 紡織機械操作の一工程。経(たていと)の間に通した緯(よこいと)を筬(おさ)で打ち入れること。
- ⑮ ( 「うちごみ」とも ) 順序なく入り交じること。→打ち込みの軍(いくさ)。
- ⑯ 水がどっと押し寄せること。
- [初出の実例]「動揺以上に浪の打込みが甚しく」(出典:海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉六)
- ⑰ 若い女のたもとなどに、手紙、名刺などを入れることをいう、不良仲間の隠語。
- ⑱ キーボードなどでデータを入力すること。
打込の語誌
文献上は、⑮の中世の戦記物語類や武家作法書類にみられる例が古いものである。「うちこみのいくさ」という形でも同時期に見え、平時における騎馬の通行、行進についても用いられる。⑮の(イ)の「太平記」の例も、大塔宮護良親王の入京の盛儀を描写した場面で、合戦の場面ではない。
ぶっ‐こみ【打込】
- 〘 名詞 〙
- ① いろいろなものを入れること。また、そのように作ってあるもの。
- [初出の実例]「ふところより、ぶっ込のやうな紙袋を出し」(出典:洒落本・真女意題(1781))
- ② 「ぶっこみづり(打込釣)」の略。
- ③ 無縁仏を葬ること。また、その共同墓地。