捕物帳(読み)とりものちょう

日本大百科全書(ニッポニカ)「捕物帳」の解説

捕物帳
とりものちょう

(1)江戸時代、町奉行(ぶぎょう)所において召し捕るための罪人とその罪状を書き記した帳簿。(2)時代小説として、捕物を題材とした作品。町奉行配下の与力(よりき)・目明しが登場し、江戸情緒、人々の人情・風俗などを描いたものが多い。かつて作品がシリーズものの映画となり、近年ではテレビで取り上げられ、好評を博している。作品としては岡本綺堂(きどう)の『半七捕物帳』をはじめ、佐々木味津三(みつぞう)の『右門(うもん)捕物帳』、野村胡堂(こどう)の『銭形平次捕物控』、久生十蘭(ひさおじゅうらん)の『顎(あご)十郎捕物帳』、城昌幸(じょうまさゆき)の『若さま侍捕物手帖(てちょう)』、横溝正史(よこみぞせいし)の『人形佐七捕物帳』などがある。

[芳井敬郎]

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精選版 日本国語大辞典「捕物帳」の解説

とりもの‐ちょう ‥チャウ【捕物帳】

〘名〙
① 江戸時代、町奉行所の御用部屋に備えつけた帳簿で、召しとるべき罪人と罪状について目明しなどの報告を書き留めた覚え書き。
※半七捕物帳(1923)〈岡本綺堂〉石灯籠「与力や同心が岡っ引等の報告を聞いて〈略〉書き留めて置くんです。その帳面を捕物帳(トリモノチャウ)と云ってゐました」
② 捕物を題材とした、時代物の推理小説。大正五年(一九一六)に第一作が書かれた岡本綺堂の「半七捕物帳」に始まる。
※安吾新日本地理(1951)〈坂口安吾〉道頓堀罷り通る「小説新潮は連載の捕物帳だ」

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百科事典マイペディア「捕物帳」の解説

捕物帳【とりものちょう】

江戸時代の目明(めあか)しなどが捕物(罪人逮捕)について記した覚書。転じてそれをテーマとした大衆文学作品をさす。岡本綺堂《半七捕物帳》,野村胡堂《銭形平次捕物控》,佐々木味津三《右門捕物帖》,坂口安吾《安吾捕物帳》,城昌幸《若さま侍捕物手帖》,久生十蘭《顎十郎捕物帖》などがある。
→関連項目推理小説

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デジタル大辞泉「捕物帳」の解説

とりもの‐ちょう〔‐チヤウ〕【捕(り)物帳】

《江戸時代、目明かしなどの捕り物についての覚え書き帳の意から》犯罪事件を題材とした、時代物の推理小説。「半七捕物帳

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世界大百科事典内の捕物帳の言及

【推理小説】より

…しかしホームズ・シリーズが世界推理小説史上不滅の地位を今日なお占めているのは,創始者ポーのやらなかった新機軸を出したからである。例えば1891年以後,雑誌《ストランド・マガジン》に定期的に読切り短編を連載し,日本でいう〈捕物帳〉形式を確立したこと,語り手のワトソンに,ポーの場合見られなかった人間味を添えたこと,なぞ解きの興味だけでなく,時代の風俗や冒険的興味,すなわちディケンズやコリンズが重視した要素をも取り込んだこと,などである。以後ホームズの後継者,亜流は今日に至るまで後を絶たず,推理小説の一つの定型が確立されたのである。…

※「捕物帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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