小説家。樺太(からふと)(サハリン)真岡(まおか)生まれ。早稲田(わせだ)大学露文科卒業。朝鮮総連、朝鮮新報社などに勤務のかたわら創作に打ち込み、祖国分断に苦悩する在日朝鮮人の家族を描いた長編『またふたたびの道』(1969)で『群像』新人文学賞を受賞。以後、祖国統一を目ざす純粋な悲願と、在日朝鮮人であるがゆえにつねに風化の危機をはらんでいる民族的主体性の回復という重い主題に取り組み続け、『われら青春の途上にて』(1969)、『伽倻子(かやこ)のために』(1970)、『青丘の宿』(1971)などを発表。1972年(昭和47)、当面する政治的課題を亡き母の思い出に託した『砧(きぬた)をうつ女』で第66回芥川(あくたがわ)賞を受賞。ほかに、長編には『約束の土地』(1973)、『追放と自由』(1975)、『サハリンへの旅』(1983)など。中短編集には『われら青春の途上にて』(1970)、『私のサハリン』(1975)、『流民伝』(1980)。エッセイ集には『北であれ南であれ わが祖国』(1974)、『イムジン江をめざすとき』(1975)、『青春と祖国』(1981)などがある。また3000枚に及ぶ大作『見果てぬ夢』(1977~1979)では、韓国のソウルを舞台として、独自な「土着社会主義」の実現を目ざす人々の苦闘を描いている。ほかに『百年の旅人たち』(1994。野間文芸賞)、『死者と生者の市』(1996)など。
[古林 尚]
『『またふたたびの道』(講談社文庫)』▽『『見果てぬ夢』全5巻(講談社文庫)』▽『『百年の旅人たち』(新潮文庫)』▽『『サハリンへの旅』(講談社文芸文庫)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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