盗む(読み)ヌスム

デジタル大辞泉 「盗む」の意味・読み・例文・類語

ぬす・む【盗む/×偸む】

[動マ五(四)]
ひそかに他人のものを取って自分のものにする。「金品を―・む」
他人の技・芸や考えなどをひそかに、また無断でまねる。「他人の論文を―・む」
人に気づかれないように、何かをする。「人目を―・んで会う」
わずかの時間をやりくりして、何かをする。「暇を―・んで読書する」
野球で、盗塁をする。「二塁を―・む」
[可能]ぬすめる
[下接句]せいぬす人目を盗む暇を盗む骨を盗む耳をおおいて鐘を盗む目を盗むろくを盗む
[類語]取る盗み取るかすめる掠め取るかっぱらう手を掛ける盗み窃盗盗用

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「盗む」の意味・読み・例文・類語

ぬす・む【盗・偸】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. 他人のものをひそかに奪いとる。かすめとる。
    1. [初出の実例]「花の色は霞にこめてみせずともかをだにぬすめ春の山かぜ〈遍昭〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・九一)
  3. ひそかに連れ出して妻とする。また、人目を忍んで異性と通ずる。
    1. [初出の実例]「而るに長女(えひめ)(ちき)りし夜、族(やから)に偸(ヌスマ)れぬ」(出典:日本書紀(720)皇極三年正月(図書寮本訓))
    2. 「其方、女房を人がぬすむをしらぬか」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下)
  4. 人目を忍んでひそかに物事を行なう。こっそりと見聞きしたり行なったりする。人目をごまかして事をする。また、他の動詞と複合して、その動作をこっそりと行なう意を表わす。
    1. [初出の実例]「己が命を 奴須美(ヌスミ)死せむと」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「『何が余りだ? 親の目を盗んで…』」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春)
  5. ぬすみ見をする。ひそかに見る。
    1. [初出の実例]「其拍子に昌作の方をチラと偸視(ヌス)む」(出典:鳥影(1908)〈石川啄木〉三)
  6. 他人の芸や作品、また考えや行ないなどをひそかにまねて学ぶ。
    1. [初出の実例]「常人の資を以て、衆師の説を竊(ヌスメ)り」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)八)
    2. 「岡の屋にゆきかふ船をながめて、満沙彌が風情をぬすみ」(出典:方丈記(1212))
  7. やりくりして利用する。
    1. [初出の実例]「昨日は一刻のひまを偸み」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)
  8. 野球で、盗塁をする。
    1. [初出の実例]「一塁を得れば二塁、三塁を盗(ヌス)む事は当然のものとされてゐた」(出典:日本野球史(1929)〈国民新聞社運動部〉無鉄砲な盗塁法)
  9. 音曲の文中のある文字の音を発音しないでうたうこと。
    1. [初出の実例]「中の穴盤渉調、中と六とのあはひに神仙調あり。かやうに間々に皆一律をぬすめるに」(出典:徒然草(1331頃)二一九)
  10. 形をおおい隠す。
    1. [初出の実例]「塩焼く浜のうす煙立のぼり、白雲富士をぬすみ」(出典:浮世草子・懐硯(1687)二)

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