耕地の肥沃度を施肥・輪作などによって維持・増進することなく,もっぱら天然の養分供給に依存する粗放で原始的な農業。耕作をつづけると土地がやせ,収穫量も減少するので,2~3年あるいは4~5年でその耕地を放棄し他へ移動する方式をとる。焼畑や切替畑はこの典型であり,北アメリカの植民地時代から西漸運動が終わる19世紀中ごろまでの農業もこの例とされる。焼畑では,耕作を放棄した後,ある年数がたてば自然の回復力によって林木が繁茂し,再び焼畑が行える状態になる。長い年月を単位としてみれば,自然の物質循環によって生態系は安定に維持されてきたといえる。しかし近年人口の増加に伴い,完全に回復するのを待たずに耕作を繰り返すという悪循環におちいった焼畑が急増し,地球の緑をおびやかし,水源や土地資源を荒廃させるという事態が生じている。先進国においても草地における過度な放牧や,乾燥地における休耕期間の短縮などによって農地が砂漠化しつつあるという。また灌漑と排水との不調和にもとづく土壌塩類集積,あるいは不適切な耕地の管理や輪作体系の不備にもとづく土壌浸食や土壌有機物の流亡など,耕地の不毛化が各種の農業的営為によって生じている。このような問題のすべてが本来の意味の略奪農業の結果とは必ずしもいえないが,農業による人為的な土壌破壊が地球規模で現在進行していることは,今後の世界の食糧の需要と供給からみて見逃すことのできない問題である。
執筆者:石原 邦
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