ヨーロッパ文芸主潮の一つ。ギリシア・ローマの古典に準拠し、精神・様式を模した17世紀フランスでのコルネイユ、ラシーヌ、ボアローらの古典主義は、のち拡散して18世紀ヨーロッパ各国に及んだ。単なる模倣に終始した群小作家が多いことからも、これをやや貶称(へんしょう)的に擬古典主義といった。一般には狭義の古典主義とほぼ同義。ドイツでのゴットシェット、レッシング、ウィーラント、イギリスでのドライデン、ポープ、S・ジョンソンらが代表的な作家で、調和のとれた端正な形式の尊重と、感情よりも理性、個性よりも普遍性の重視が特徴であった。また、イギリスのアジソン(1672~1719)、スティールらは、この傾向を風俗・道徳など実生活レベルの随筆・評論に援用した。日本では、鎌倉および江戸時代後期における平安朝文学の模作や、西鶴(さいかく)らに学んだ紅葉、露伴、一葉らの近代文学が擬古典主義の名でよばれている。
[小林路易]
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