日本大百科全書(ニッポニカ) 「擬板チタン石」の意味・わかりやすい解説
擬板チタン石
ぎばんちたんせき
pseudobrookite
第二鉄とチタンの複酸化物。理想式Fe3+2TiO5どおりのものは、合成物でしか知られておらず、単斜晶系に属するが、天然のものはTiO2が過剰でFe3+の一部はFe2+であると考えられており、斜方晶系に属する。アーマルコ石とともに擬板チタン石系を構成する。自形はc軸方向に伸びた短柱状からa軸にやや扁平(へんぺい)な板状。準等方粒状をなすこともある。TiO2に富む酸性~塩基性の火山岩中に産し、とくに小岩脈や岩枝lithophysae部に多い。捕獲岩と母岩(ぼがん)の反応部に密集することもある。日本では群馬県高崎市榛名山の安山岩中に知られる。
共存鉱物は斜方輝石、斜長石、石英、鱗珪石(りんけいせき)、赤鉄鉱、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、玻璃長石(はりちょうせき)、フッ素燐灰石(りんかいせき)など。微細粒の場合は同定しがたい。その名のように板(いた)チタン石に似るが、産状を異にする。板チタン石より透明度が低く、火山岩以外の産出はないとされている。命名は板チタン石との外観的類似性による。
[加藤 昭]