放射能の特性を利用して放射性元素を研究する化学の一分野。これと似た用語である放射線化学は,放射線によって誘起される化学反応を研究する分野であり,放射化学とは区別される。
放射化学が対象とする分野は,自然界に存在する放射性核種の分布のありさまや,その由来の研究,人工放射性同位体の製造から分離,精製,化学的性質の研究,核反応に伴う反跳効果で生成するホットアトムの化学反応性を調べるホットアトム化学,放射能を化学分析に利用する方法など広い範囲に及んでいる。このほか,放射性元素がその安定同位体と同じ化学反応性を示すことを利用するトレーサーとしての利用や,放射性元素を線源として使用して検体材料の密度や厚みの測定を行うなどの利用技術も,応用放射化学としてこの分野に含める場合がある。
なお,核種の性質の研究,核種の生成・崩壊過程の研究などを行う分野を核化学nuclear chemistryといい,広義には放射化学に含まれる。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
放射性物質を研究対象とする化学の一分野。1896年フランスの物理学者ベックレルにより放射能の現象が発見されてから、放射性元素についての多くの化学的研究が行われ、一つの大きな分野となり、その総合と体系化に伴い、1911年ごろイギリスの物理化学者ソディによって命名された。おもな研究対象は、天然における放射性核種の生成・分布、人工放射性核種の生成、放射性核種の分離生成、放射性核種を含む化合物の性質、核反応の化学的諸効果たとえば反跳効果、放射性核種の利用などである。
放射性核種の検出・定量などをそれらの放射線を利用して行うことが多いので、きわめて微量でも取り扱うことができるが、またその反面放射線を取り扱うので、特殊な装置が必要な不便さもある。放射線を取り扱うが、それが目的ではないので、放射線化学とは関係はあるが、明らかに異なった分野である。
[中原勝儼]
『河村正一著『放射化学と放射線化学』(1980・通商産業研究社)』
放射性元素を研究対象とする化学の一部門.具体的には,天然放射性元素の存在状態,人工放射性元素の製法,放射性元素相互の分離,分離精製された元素の核物理的核化学的性質,放射性物質の取り扱い技術,トレーサーとしての応用などが含まれる.核化学とは密接な関係にあり,境界も明確でないことが多い.放射線化学とは名称上混同されやすいが,放射線化学は通常の(非放射性)物質に対する放射線の化学作用を研究する分野であって,両者は明確に区別すべきものである.放射線化学で放射性物質を放射線源として利用することが多いが,放射線源としては人工的な粒子加速器を用いることも多い.両者は目的,対象,性格,手法において大いに異なる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…たとえば鉱物化学,岩石化学,温泉化学,海洋化学,大気化学などはその名称のとおりの分野の化学であり,それらを含めて地球を対象とする地球化学という大きな分野も無機化学の一つである。また元素を各種の核種を中心としてみる立場からすれば核化学があり,放射性核種を取り扱う放射化学,核反応と関係のあるホットアトム化学などがあるが,宇宙の発生を考えるとき,それらをも含めた宇宙化学も一つの分野である。さらに個々の元素はそれぞれ特別な性質をもっているので,それらを中心としてたとえばフッ素化学,ホウ素化学のように呼ばれることもある。…
※「放射化学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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