教育の効果を数量的、客観的に測定することをいう。狭義には、学習指導の効果の測定を意味するが、広義には、その効果に関与する学習者の知能、適性、興味、人格、身体などの測定を意味し、さらに教育課程、学習指導法、教師の資質、家庭や学校の環境的諸条件の測定などを含めることもある。
従来からの伝統的な試験法(口頭試問や論文体テスト)の主観性を排し、教育の効果を客観的にとらえようとする動きは、20世紀の初め、アメリカで盛んになった。それは、就学、進級、コースの選択、能力別クラス編成、教育診断などのために、客観的な教育測定やテストが必要となってきたためである。この教育測定運動の中心的人物であったソーンダイクは、「存在するものはすべて量的に存在する。そして量的に存在するものは測定することができる」と述べ、弟子たちとともに種々の標準テストを作成した。他方、フランスでは個別式知能検査が考案され、続いてアメリカで団体式知能検査も標準化された。さらに1930年代に入ると、興味、態度、パーソナリティーなどについての測定方法が開発され、子供のすべての側面について、教育的目的に即した測定が可能となった。日本でも大正中期から昭和初期にかけて、当時の算術、読み方、書き方、英語など多くの教科についての標準テストや、個別式および団体式知能テストの標準化が盛んに行われた。第二次世界大戦中は一時影を潜めたが、戦後はアメリカの影響を受けて、ふたたび知能テストや客観的な学力テストが多く用いられている。今日では教育測定は、教育評価の一部として、客観的資料の収集という重要な役割を果たしている。
[河合伊六]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この著書には児童の心身の発達をはじめ,個人差と知能検査,各教科における精神作業の分析などがとりあげられており,先にふれた四大領域にいずれ整理されていくような内容がすでにほぼ網羅されていた。他方アメリカでは,モイマンと同様ブントの教えを受けたG.S.ホールが児童の精神内容に関する研究成果を発表していわゆる児童研究運動child study movementを推進し,またキャッテルJames McKeen Cattellが《メンタルテストと測定》を著して教育測定運動の基礎をすえた。そして20世紀に入り,これらを背景としてE.L.ソーンダイクが教育心理学の体系化をはかった。…
…また教育評価は,一般的には,ランクづけや序列化の活動と理解されがちであるが,その機能は,本質的にはこれらとは無縁であって,〈教育実践に内在〉し,教師がみずからの教えるべき目標,教材,指導方法等を点検しなおし,〈子どもを見る目〉を一層確かなものにしていく契機なのである。 そもそも〈教育評価educational evaluation〉という概念は,1930年代にアメリカにおいて,20世紀初頭からE.L.ソーンダイク,ストーンC.W.Stoneらによって展開された教育測定educational measurement運動に対する批判の中で登場した新しい考え方である。それは教育測定の考え方が教育の中に〈数量化〉をもちこみ,客観テスト,標準テストの重要性を強調したのに対して,学習過程の評価のための事例研究法,観察法,生徒の自己評価の方法,教師自身の手になるテストの工夫など多様な手段で,生徒の学習状況を把握しようとするものであった。…
※「教育測定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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