文化社会学(読み)ブンカシャカイガク(英語表記)cultural sociology 英語

デジタル大辞泉 「文化社会学」の意味・読み・例文・類語

ぶんか‐しゃかいがく〔ブンクワシヤクワイガク〕【文化社会学】

文化を対象とする社会学。第一次大戦後のドイツ形式社会学を批判しておこったもので、社会現象の内容としての文化を研究対象とする。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「文化社会学」の意味・読み・例文・類語

ぶんか‐しゃかいがくブンクヮシャクヮイガク【文化社会学】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Kultursoziologie の訳語 ) 第一次世界大戦後、ドイツにおいて、A=ウェーバー、M=シェーラー、K=マンハイムらによって、形式社会学を批判して提唱された社会学の一部門。文化諸要素間の関係および文化全体の性格を社会と関連させて研究する総合社会学立場をとる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「文化社会学」の意味・わかりやすい解説

文化社会学
ぶんかしゃかいがく
cultural sociology 英語
Kultursoziologie ドイツ語

文化社会学には三つの異なる立場があるが、それらを社会学における文化概念の三つの定義に対応させて説明しよう。(1)文化を人間の行為や生活として社会と同じ広がりをもつとする広義の定義、(2)社会を形式とし、文化を内容とする狭義の考え、(3)物質文化を文明とし、精神文化を文化とする最狭義の考え、以上の分類である。

[亀山佳明]

アメリカ文化社会学

(1)の定義にたつのは、1920年代に心理学的社会学への批判としておこったアメリカ文化社会学であり、おもに文化人類学の文化概念に依拠していた。W・F・オグバーン、ハンキンズF.H.Hankins、W・I・トマスらが担い手であった。彼らは、社会現象の諸変化は心理的要因や生物的要因によってではなく、社会の歴史的・文化的要因から説明されなくてはならないと考えた。たとえばオグバーンの社会変動論は次のようであった。彼は文化を物質的文化と非物質的文化とに大別し、文化の主要な特徴である蓄積が行われるのは物質文化であるとした。物質文化への適応の仕方を決めるのが適応文化であるが、これは非物質文化に属している。物質文化が急速に進化するのに対して、非物質文化の変化は緩慢であり、そのためこの両文化の間には不調和が生じやすくなる。オグバーンは、物質文化に対する非物質文化の遅れを文化遅滞cultural lagと名づけた。

[亀山佳明]

ドイツ文化社会学

(2)の立場には、1920年代ドイツを中心に、M・シェラー、A・ウェーバー、K・マンハイムなどを主体としたドイツ文化社会学がある。彼らはワイマール体制の社会変動の激しい時代を背景に、従来のジンメルウィーゼによる形式社会学に異を唱えた。形式社会学は、その対象を、内容から抽象された「社会化の形式(心的相互作用)」に限定したため、歴史性や文化的内容を欠落させていた。A・ウェーバーらは、こうした形式社会学の非現実性を批判し、内容としての文化、すなわち政治法律、経済、芸術などを社会学の対象とすることで、社会学に現実性と実践性、歴史性と総合性とを回復しようと企てた。

 たとえばシェラーは、社会学を実在社会学と文化社会学とに分け、実在社会学は人間の三つの本能(性、力、食)に対応した種族、権力、経済という社会の下部構造をその対象とするのに対して、文化社会学は理念を目ざす精神によって創造される宗教、哲学、科学、芸術という上部構造を対象とすべきだと考えた。彼は、上部構造は下部構造によりその動きを左右されはしても、その内容までをも決定されることはないとした。また、A・ウェーバーは、社会的・歴史的現実を、社会過程、文明過程、文化過程の三つから構成されるとし、それぞれが独自性をもつとともに、これら三者が動的、静的に相互に連関しあっていると述べた。先のシェラーの用語から明らかなように、ドイツ文化社会学は他方で、当時ドイツで隆盛となりつつあったマルクス主義への関心を強くもち、それとの対決の姿勢をも有していた。この点をもっとも顕著に示しているのがマンハイムの知識社会学であった。

[亀山佳明]

第三の文化社会学

(3)の立場は、社会の観念的な上部構造をなしている諸現象を研究対象とする知識社会学、宗教社会学、芸術社会学、音楽社会学、文学社会学などの特殊社会学を総称するときに使用される。

 通常、文化社会学といわれるのは(2)のドイツ文化社会学をさす場合である。

[亀山佳明]

『D・マーチンデール著、新睦人他訳『現代社会学の系譜』(1974・未来社)』『W・オグバーン著、雨宮庸蔵他訳『社会変化論』(1944・育英書院)』『飯島宗享他訳『社会学および世界観学論集』上下(『シェーラー著作集9・10』1977、78・白水社)』『A. WeberIdeen zur Staats und Kultursoziologie (1927, Junker und Dünnhaupt,Karlsruhe)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文化社会学」の意味・わかりやすい解説

文化社会学
ぶんかしゃかいがく
cultural sociology

1920年代にドイツにおいて提唱された社会学。その特徴は社会学の対象を社会関係の形式に限定することなく,社会関係の内容をなす文化形象 (広く経済,政治,法律などを含む) を主要な対象としたところにある。代表者としては,A.ウェーバー,K.マンハイム,H.フライアー,M.シェーラーらがあげられる。マンハイムは,マルクス主義の修正を試み,知識社会学を成立させ,現在多くの影響力をもっている。一方,アメリカの文化社会学は文化人類学の影響を受け,心理学主義に対抗して人間の行動様式を歴史的,文化的側面からとらえるという立場をとった。 W.F.オグバーンなどがその立場に立つ。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android