文心雕竜(読み)ブンシンチョウリョウ

デジタル大辞泉 「文心雕竜」の意味・読み・例文・類語

ぶんしんちょうりょう〔ブンシンテウリヨウ〕【文心雕竜】

中国最古の文学理論書。10巻。りょう劉勰りゅうきょう著。500年ごろ成立。古代文章をとりあげ、その文体修辞それぞれの部門ごとに整理・解説したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文心雕竜」の意味・わかりやすい解説

文心雕竜
ぶんしんちょうりょう

中国、六朝(りくちょう)梁(りょう)の文人劉勰(りゅうきょう)の著した体系的かつ総合的な中国最初の文学理論書。「ぶんしんちょうりゅう」ともいう。10巻50編。「原道」から「弁騒」の5編は文学原理論、「明詩」から「書記」の20編は文体論、「神思」から「程器」の24編は修辞の原理や方法を論じ、最後の「序志」は著作の動機を述べる。劉勰が30代、つまり六朝斉(せい)の末ごろに書かれたもので、「文心」とは文をつくるための用心であり、「雕竜」とは竜を雕(ほ)る、雕琢(ちょうたく)潤色のことである。彼は雕琢潤色に文学の基本を置き、自然に発露する美を尊重、当時の技巧のみを競う弊害を正し、経書の精神に回帰しなければならないと説いた。同時代の鍾嶸(しょうこう)の『詩品(しひん)』とともに文学理論の名著とされる。

[根岸政子]

『興膳宏訳「文心雕竜」(『世界古典文学全集25』所収・1964・筑摩書房)』『戸田浩暁訳『文心雕竜』(1972・明徳出版社・中国古典新書)』『戸田浩暁訳『新釈漢文大系64・65 文心雕竜 上下』(1974~1978・明治書院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「文心雕竜」の意味・わかりやすい解説

文心雕竜 (ぶんしんちょうりょう)
Wén xīn diāo lóng

中国,南朝梁の劉勰(りゆうきよう)の著になる文学理論の書で,10巻50章から成る。〈ぶんしんちょうりゅう〉ともいう。文学は天地自然のおのずからなる美を体したものという原理にもとづき,前半部では韻文・散文を包括する33類の様式について詳密な文体論を展開する。後半部では,一転して文学のすべての様式に関するさまざまな問題を取り上げて論ずる。総合的・有機的な体系のもとに構築された精妙な理論は,古今に比を絶する独自の存在である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文心雕竜」の意味・わかりやすい解説

文心雕竜
ぶんしんちょうりょう
Wen-xin diao-long

中国,六朝時代の文学評論書。劉勰の著。10巻 50編。斉末の永元2(500)年頃成立。中国で最初の体系的な文学理論書で,まず文学の本質を説く原理論に始まり,次に各ジャンルの発生,変遷,性格を述べた文体論を展開,さらに創作論,修辞論,作家論,批評論が続き,最後に本書の著述意図を記す。ほぼ同時代の鍾嶸(しょうこう)の『詩品』,昭明太子の『文選』序とともに中国文学評論史上,最も重要な書の一つ。

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百科事典マイペディア 「文心雕竜」の意味・わかりやすい解説

文心雕竜【ぶんしんちょうりょう】

中国,南北朝の文学論集。〈ぶんしんちょうりゅう〉とも。南朝梁の劉【きょう】(りゅうきょう)の著。斉の末年ごろ成立。10巻,50章からなる。組織的文学論としては中国最初のもので,文学の本質論,文体の性格と発展の経過,文学の創造,鑑賞,修辞,批評などについて論述する。文学の美は道が自然にあらわれたものと主張する。

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世界大百科事典(旧版)内の文心雕竜の言及

【中国文学】より

…文学の評論は曹丕の〈文を論ず〉の一篇に始まり,作家の個性が論じられた。前述の陸機の〈文の賦〉は創作活動についての思索の結果などを韻文でつづったが,劉勰(りゆうきよう)の《文心雕竜(ぶんしんちようりよう)》は50章の大作で,陸機の示唆したところを体系化し,精密に詳しく述べた。全文が四六文で書かれている。…

【対句】より

…漢代ごろからより重視されるようになり,六朝時代にはその技巧が極度なまでの発展をみた。6世紀初めの文学理論書《文心雕竜(ちようりよう)》は,対句の存在意義を説いて,人体が手,足,耳,目のごとく左右相称の形を生まれながらにして賦与されているように,詩文においてもごく自然に対句の表現形式が生まれてくると述べている。そこに示唆されるように,一字一音節という漢語の特色や,バランス感覚を重んずる中国人の思考法とも密接なかかわりを有する修辞技法ということができる。…

※「文心雕竜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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