コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

国語学 こくごがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国語学
こくごがく

国語 (→日本語 ) を研究対象とする学問。特定個別言語学の一つ。したがって,一般言語学的研究方法や研究分野が国語学にもあてはまり,理論的研究と実証的研究とで相互に補い合う関係にある。音声学音韻論文法論 (形態論統辞論から成る) ,意味論などがあり,それぞれに共時的 (記述的) 研究,通時的 (歴史的) 研究がある。日本語方言学も国語学の一部門で,やはり上述の諸分野の研究,言語地理学 (方言地理学) ,琉球方言を含めた比較方言学などが含まれる。日本人が国語を観察し記述しはじめたのは,平安時代とみられる。悉曇 (しったん) 学の影響で音韻研究が興り,平安時代に安然 (あんねん) ,院政時代に明覚 (めいかく) ,心蓮 (しんれん) ,鎌倉時代に信範 (しんはん) などの学者が出た。江戸時代には国学が興隆し,現代の術語を用いれば「記述言語学的研究」が行われた。契沖,本居宣長,石塚龍麿らのかなづかいの研究,宣長,富士谷成章,鈴木朖,本居春庭,東条義門らの文法研究が進められた。明治以後は上田万年,大槻文彦,大矢透,山田孝雄,松下大三郎新村出,橋本進吉,神保格,東条操,佐久間鼎,時枝誠記,有坂秀世などの学者が輩出した。最近では構造言語学的研究,生成文法的研究も盛んである。なお,伝統の枠に縛られた国語学を脱皮させ,より言語学的研究を進めるべきであるとし,これを「日本語学」ないし「日本語言語学」と呼ぶことを提唱する人もある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

こくご‐がく【国語学】

日本語を研究対象とする学問。日本語の音韻・文法・語彙・文字・文体・方言などについて歴史的・地理的に、また、個別的・体系的に研究する。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

国語学【こくごがく】

日本語を研究対象とする学問の通称。明治20年代に旧東京帝大の文科大学に上田万年によって,この名の講座が開かれてから名称が確立した。〈日本語学〉と呼んだほうが好ましい点もある。
→関連項目国語調査委員会物集高見

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

こくごがく【国語学】

日本語を研究対象とする学問の通称。方法と関心の重点とを異にするにしたがい,種々の立場ないし傾向がみられる。国語学の名称が社会的に確立されるようになったのは,旧東京帝国大学の文科大学において,明治20(1887)‐30年代に,上田万年(かずとし)によってその名の講義が開かれるようになってからである。それ以来,実証的にも,理論的にも,さまざまの展開を経て,今日に至っている。国語学の呼称に先だって,〈日本語学〉という名を用いた人があるが(岡倉由三郎《日本語学一斑》,佐藤寛《日本語学新論》),これは世間に流布せずに終わった。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

こくごがく【国語学】

言語学の一分野として、国語すなわち日本語を研究対象とする学問。日本語の音韻・語彙・文法等の言語要素、およびそれらの歴史や地域差としての方言、文字および文体などについて研究する。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国語学
こくごがく

国語すなわち日本語について、客観的・体系的な研究を行う文化科学。日本語学ともいう。言語学の一部門であるが、国語という言語のもつ特性に伴い、言語学一般に比べて独特な内容を含んでいる。一般の言語学と同じく、音韻、文法、語彙(ごい)の部門があるが、そのほかに文字、文体などの部面が重視される。また、国語の歴史的研究や方言研究の部門があり、近時はコンピュータの導入による計量的研究の進展も著しい。[築島 裕]

音韻

理論面では、国語の音韻の分析、音韻の単位の設定、音節・音素の認定とその体系づけなどの研究があり、実際面では、音声器官の生理学的研究を含む音声学がある。また、古来の音韻の歴史を研究する音韻史学がある。国語の音韻についての研究は、古く平安時代からおこり、もと漢字の字音や悉曇(しったん)(梵字(ぼんじ)ともいい、古代インドの文字で、仏教とともに日本に伝来した)の研究のなかでおこった。10世紀末ごろには五十音図がつくられていたが、これは国語の音節の体系的構成であり、11世紀末には清音と濁音との対立関係も明らかにされていた。また、そのころには、国語音にない漢字音独特の音節なども指摘されていた。漢字音の研究は仏典や漢籍の解読のための必要性から発達し、それとの対比のなかで国語音の研究が進んだ。古く日本語にン(n)の音がなかったこと、漢字音の韻尾にmとnとの区別があったことなども、江戸時代末までに明らかにされていた。音韻が歴史的に変化することが明確に意識されたのは、明治以後の西洋の言語学輸入以後のことだが、早く明治初年には、ハ行音の子音が古くpであって、それが琉球(りゅうきゅう)方言に残存していることなども主張された。明治末以後、文献の調査研究が進み、訓点資料、キリシタン資料などが活用されて、8世紀末と16世紀末を境目として、国語音韻史に三つの区分をたてることが提唱され、各期における音韻体系の全容が知られるに至ったが、古代の国語には母音が8種あり、いわゆる母音調和の要素を含むことなどが解明されて、日本語の系統論や本質論にも大きな進展がみられた。[築島 裕]

文法

国語の文法の研究は、語論、文論などに分かれるが、従来は語論が中心をなし、品詞分類、活用、用法などの面で発達を遂げてきた。しかし近時は、文の構造の分析など構文論的研究が進み、さらには文の集合たる文章を対象とする分野も提唱された。文法は論理的体系論で、観点によって種々の学説が成立しうるが、橋本進吉の外形的な文節論を基とする文法論が、教育界を中心に一般に広く知られている。しかし、山田孝雄(よしお)、松下大三郎、時枝誠記(もとき)などの文法論も、それぞれ独自の特徴を備え、学界では重視されている。体言・副詞・形容動詞など相互の本質的関連、活用の概念と構成、自立語と付属語との関係などは、現下の文法学界の中心課題といえよう。
 国語の文法研究は主として中世以降に発達した。最初は活用による語尾の変化、係り結びの法則などの発見から進んで、江戸時代以後には、用言の活用表、活用形の設定、活用の種類の分類、品詞分類などの研究が進み、近世末にはほぼ現在みられるような語論の基礎ができあがった。それらのなかで、本居宣長(もとおりのりなが)、富士谷成章(ふじたになりあきら)、鈴木朖(あきら)などの業績がとくに著しい。幕末以後、洋学による西洋文典の直訳的輸入もあったが、在来の説と相まって、大槻文彦(おおつきふみひこ)、山田孝雄などの文法説が現れるに至った。古くから明治中ごろまで、文法研究の対象は、いわゆる文語文法で、もっぱら中古の歌文であったが、中世以来長い間文章語として規範的に使用されてきたものとして、当然の結果であった。明治以後には、言文一致運動などにより、現代語文がしだいに発達し、社会的地位を高めたのに伴い、口語文法の研究がおこった。しかし、従来の文語文法が基とされたため、種々の矛盾が生じ、その方法が反省されるに至っている。一方、文法の歴史的研究については、江戸時代までは断片的でまとまったものはなかったが、明治末期から国語の歴史的研究が進展するに伴い、山田孝雄は、奈良時代、平安時代、鎌倉時代の各時代について、共時論的(一定の時間における現象を平面的・体系的に記述すること)研究を初めて実践して、文法史研究の基礎を築いた。のち、湯沢幸吉郎らによって中世以降各時代の文法現象が解明されてきた。なお近時は、アメリカの言語学の方法による生成文法の論を国語のうえに適用した試みも提出されている。[築島 裕]

語彙

単語の意味の研究は、個別的な面もあるが、語の構成法、語音の変換、語源の方法論など、一般的な問題も多い。これらは、各時代ごとに法則性の存在することが、国語史研究の進展によって明らかになってきたので、方法論も発達しつつあるが、なお比較的後進的な分野である。意味論は現在も方法論の模索が行われている状態である。また、語彙の集録である辞書は、古代以来多くのものが編述されてきたのであり、編述それ自体が語彙研究をなす面もあるが、古くは中国から輸入された漢字字書を模倣改編することから始まり、やがて国語音を基準にした配列のものも出現する。一方、和歌和文の研究から古語の解釈作業が発達し、語釈もしだいに詳密なものとなった。『節用集』『下学集』などの一般日用語辞書的なものが中世末以降発達したが、近世末になると、一方では考証を主とした精細な用例集も出現した。明治中期、大槻文彦によって著された『言海(げんかい)』は、西洋の近代辞書の体裁を踏まえた最初のものといわれるが、他方では古来の国語辞書の伝統も受け継いでいる。幕末には狩谷(かりやえきさい)などの考証学者が出て古代辞書の研究が進んだが、その体系的・史的研究は大正時代の橋本進吉の節用集研究などが早いものである。しかしこの方面は、個別的調査が多く、辞書史の流れのような大局的見地からの研究はあまり試みられていない。なお、現代語の語彙調査については、近時、計量的研究が発達して、多くの成果が生み出されている。[築島 裕]

文字

国語は古来、漢字、平仮名、片仮名を常用して複雑な表記体系を備えているにもかかわらず、文字の研究はあまり盛んではなかった。中国で盛行した漢字の研究は、日本ではわずかな業績しか出なかった。仮名については、中世以来論者はあったが、俗説的なものが多く、実証性や歴史的観点に乏しかった。明治末期に大矢透(とおる)が仮名の歴史的研究を開拓し、万葉仮名の字音、平仮名・片仮名の起源と発達、五十音図、いろは歌の成立の研究に、初めて科学的方法を導入して、目覚ましい成果をあげた。この方面は、大正以後、ことに第二次世界大戦後、訓点資料の研究の進展により、長足の進歩を遂げてきている。[築島 裕]

文体

文体の歴史的研究は、江戸時代までは観念的なものが多かったが、明治以後、中古の訓点資料、中世の抄物(しょうもの)資料などの研究が進み、現在では相当に細かい研究も出るに至った。しかし、方法論の面でなお問題が多く、今後の進展が望まれる分野である。[築島 裕]

方言

古くから方言への関心はあり、江戸時代には方言語彙集などが現れたものの、いずれも断片的、部分的であった。全国一律の大調査は明治中期に先鞭(せんべん)がつけられ、昭和初期以来、体系的方法論が進んで、全国にわたる音韻、文法、語彙の体系的研究が進捗(しんちょく)し、全国的な方言区画説が提唱され、その史的関係が論ぜられるに至った。近時は、共通語と方言、同一地域内での方言の年齢差、方言と国語史、などの問題も取り上げられている。
 このほか、国語の系統論については、明治初期以来、ウラル・アルタイ語系説、南方語系説などをはじめ、諸種の言語との親近性を説く説が多いが、ヨーロッパ諸言語のように豊富な資料が得られないため、どの説も学界の定説の地位につくことができない状態にあり、今後も多くの進展は望みえない、というのが実情であろう。[築島 裕]
『「国語学概論」(『橋本進吉博士著作集1』1946・岩波書店) ▽時枝誠記著『国語学原論』(1941・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の国語学の言及

【国学】より

…また,その目的のために古言を正確に理解する必須の補助学問として着手された,漢字音,かなづかい,てにをは,用言の活用などについての研究が,《漢字三音考(かんじさんおんこう)》《詞玉緒(ことばのたまのお)》《御国詞活用抄(みくにことばかつようしよう)》などの国語研究上の業績に結晶していることも見のがしてはならない。これらの仕事は,富士谷成章(ふじたになりあきら),鈴木朖(すずきあきら),本居春庭(もとおりはるにわ)などの次代の学者に受けつがれ,今日の国語学の基礎をかたちづくっていったのである。国語学
[第3期]
 宣長の死後,国学は大きくいって二つの流れに分かれる一時期を迎える。…

※「国語学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

国語学の関連キーワード金沢庄三郎国語のため計量国語学日本語学会安藤正次延約通略中田祝夫小林好日佐伯梅友詞の緒環福井久蔵春日政治保科孝一吉沢義則亀田次郎悉曇学国文学国語史訓点転語

今日のキーワード

ムガベ大統領

1924年、英植民地の南ローデシア(現ジンバブエ)生まれ。解放闘争に参加し、80年にジンバブエを独立に導いた。同年から首相、87年から大統領として実権を握り続けた。2000年以降は白人農場主の農園を強...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

国語学の関連情報