日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本海岸地域」の意味・わかりやすい解説
日本海岸地域
にほんかいがんちいき
日本列島のうち、本州の日本海斜面地域をいう。地形は海岸線の変化が少なく、大きな湾や半島は少ない。気候は日本海式気候で、夏よりもむしろ冬に降水量が多い。ただ夏の気温は太平洋岸と大差がなく、よくイネの生育を促す。冬には雨は雪に変わり、ときに豪雪となり、新潟県は世界有数の豪雪地域となっている。山陰、北陸とも河川の流水量が豊富で、水田開発が古くから進み、いまも東北西部や北陸は米の生産量が多い。また、海岸砂丘や扇状地、河岸の自然堤防で、果樹や草花(球根)の特産で知られる所が少なくない(球根は豪雪下でもよく育つ)。ほかに、東北地方西部は林業、山陰は紙パルプの原料林で知られる。また、ここは日本の交通幹線から離れ、冬は雪が野外の生産活動を妨げてきたので、産業の近代化が後れ、冬季の出稼ぎが多かった。しかし、第二次世界大戦中に工業動力としての電力の利用が盛んになり、北陸の河川での水力発電利用による電気化学工業がおこって重化学工業化を促し、現在北陸工業地域が形成されている。また秋田・山形その他の空港近くには先端産業がおこっている。上越・秋田・山形新幹線や関越・北陸自動車道の開通により、首都圏からの交通の便が改善され、冬季の雪はスキー客を誘引する資源となった。日本海岸地域には、太平洋岸地域にあるような大都市はないが、中都市や小都市があり、これらの都市を結んで相互の交流を活発にする高速交通網や情報・通信網の整備が期待されている。
[浅香幸雄・菅野峰明]