日本大百科全書(ニッポニカ) 「太平洋岸地域」の意味・わかりやすい解説
太平洋岸地域
たいへいようがんちいき
日本列島のうち本州の太平洋斜面の地域。ここの海岸線は変化が多くて内海・内湾が多く、瀬戸内海はその最大のものである。半島も多く、房総半島、伊豆半島、渥美半島、知多半島、紀伊半島などがある。海岸は沈降・隆起の地殻運動によって至る所にリアス海岸(リアス式海岸)や段丘海岸がみられ、関東、濃尾(のうび)をはじめいくつもの堆積(たいせき)平野が広がる。気候は太平洋岸式気候で、夏や台風期には多量の降雨があるが、冬は乾燥して雪は少なく、一年中産業活動ができる。この地域は歴史上日本の中心舞台の役割を果たしてきた。中世の鎌倉幕府、近世の江戸幕府はいずれも関東にあり、明治の東京遷都により、この地は名実ともに政治の中心地となった。ここの諸平野は、現代日本の産業、経済活動の中心地をなす。平野では農牧業、山地では林業、沿岸の港では漁業(沿岸、沖合、遠洋)などが活発に営まれる。これらの農牧林水産物には生鮮、加工両食料品や建築材をはじめ、特産、名産も少なくない。この地域では在来工業が早くからおこっていたが、20世紀初期には近代工業が導入され、現在は重化学工業をはじめ、軽工業、また先端産業にわたって工業は諸平野に広がり、京浜、阪神、中京、また東海や瀬戸内海など世界有数の大工業地帯となっている。
こうして太平洋岸地域は、外国との交流が活発になった第二次世界大戦後に日本の政治、行政、また近代工業、文化の中心地としていくつもの世界的巨大都市が発展し、さらに副次的中心都市が連続して東海道(太平洋)メガロポリスとよばれるようになった。それらの都市を結ぶ交通も発達し、東海道・山陽新幹線や東名・名神・山陽高速自動車道、航空便も開け、国際戦略港湾や国際拠点港湾も多い。しかし、最近人口が過度に集中した結果、過密の弊害も著しく、その防止、除去対策が国の課題となっている。
[浅香幸雄・菅野峰明]